Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 2 胎児胎盤機能の超音波評価

(S374)

胎児発育遅延における右冠動脈遠位部(dRCA)血流描出と周産期予後

Prenatal demonstration and outcome of distal right coronary artery in growth-restricted fetuses

宮下 進, 多田 和美, 渡邊 真理子, 金森 安里子, 栃木 辰子, 木内 香織, 茂木 絵美, 久野 達也, 渡辺 博, 深澤 一雄

Susumu MIYASHITA, Kazumi TADA, Mariko WATANABE, Anriko KANAMORI, Tatsuko TOCHIGI, Kaori KIUCHI, Emi MOTEGI, Tatsuya KUNO, Hiroshi WATANABE, Ichio FUKASAWA

獨協医科大学総合周産期母子医療センター産科部門

Department of Obstetrics, Perinatal Medical Center, Dokkyo Medical University

キーワード :

【目的】
FGR(胎児発育不全)では心筋への血流再分配により冠動脈血流が増加することが報告されているが,血流評価の意義は確立していない.FGRにおける右冠動脈遠位部(dRCA)血流の描出の可否に着目し,胎児心機能や周産期転帰との関連を解析することを目的とした.
【方法】
本研究は院内倫理委員会で事前に審査され承認を得た.2014年6月から2015年12月まで当院で分娩管理をおこなったFGR 57例について後方視的に解析した.右室自由壁外側の心尖側1/3の範囲を遠位部と定義し,妊娠24週以降にFGRと診断された症例を対象にcolorまたはpower Dopplerを用いて同部位の冠動脈血流信号を探索,描出を試みた.血流速度レンジは15-25 cm/s,探索時間は30秒以内とした.心嚢水の振動信号を除外するために,pulsed Dopplerにて冠動脈に特徴的である拡張期優位の速度波形が描出される場合のみをdRCA+,それ以外をdRCA-とした.出生前7日以内における羊水量(AFI),心胸郭面積比(CTAR),Doppler指標(臍帯動脈,中大脳動脈,中大脳動脈/臍帯動脈PI比(CPR),静脈管,大動脈峡部),心機能指標(心室内径短縮率(FS),心拍出量(CCO),臍帯静脈血流量(UVFV), Tei index(MPI))および転帰(分娩週,出生体重,臍帯動脈血pH,胎児心拍数モニタリング(FHR)異常,分娩様式,周産期死亡)を比較検討した.
【成績】
対象症例数は27/30例(dRCA+群/-群)で検査週および推定体重Z-scoreに有意差は認めなかった.dRCA+ではAFIは有意に小さく(10.0[2.6,18.5])/12.5[3.9,19.5]cm, P=0.022)(中央値[最大値,最小値],CTARは大きく(40.2[30.2,52.8]/33.9[28.8,44.1]%,P<0.001),大動脈峡部拡張期逆流(48%(13/27)/20%(6/30), P=0.024),右室拡張期壁肥厚(RVWd>3.5mm)(15%(4/27)/0%(0.30)),FHR上での胎児機能不全(44%(12/27)/20%(6/30), P=0.044)および胎児適応での帝王切開術(41%(11/27)/17%(5/30), P=0.042)が有意に高頻度であった.発育停止,CPR,FS,CCO,UVFV,MPIおよび周産期死亡(7.4%(2/27)/0%(0/30))について,いずれも有意差は認められなかった.
【結論】
FGRにおけるdRCAの描出は,心筋への慢性的な血流再分配(heart-sparing effect)と機能代償に関連した指標となりえることが示唆された.dRCA描出群では心機能や胎盤循環は保たれており,再分配にともなう保護的な現象と考えられるが,胎児機能不全発症のリスクが高いことに注意するべきである.