英文誌(2004-)
特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 1 胎児心臓超音波検査 見つけにくい心疾患をどう見つけるか?
(S372)
レベルIスクリーニングをいかに施行するかCoA,TGA,TAPVCを見落とさないために
How to perform Level I fetal echocardiographic screening
瀧聞 浄宏
Kiyohiro TAKIGIKU
長野県立こども病院循環器小児科
Department of Pediatric Cardiology, Nagano Children’s Hospital
キーワード :
小児循環器医療が進歩した今,胎児心臓病に対する出生前診断による前方視的な治療計画の立案が患者に利益をもたらし,医療経済的にも有益であるのはさらに自明なこととなっている.そのような中,胎児心臓病学会の設定したガイドラインのレベルI胎児心エコー検査は,広くすべての産科で行われるのが望ましいスクリーニングの裾野として,重要な位置にある.現在,多くの心疾患が出生前診断されており,学会がまとめるレベルII胎児心エコー登録も年間5000件を超え,集計開始当初の3倍以上に達し,レベルIの広がりが進んでいることを示している.しかし,スクリーニングされるのは,主に四腔断面異常を示す疾患群であり,出生後に緊急で対応が必要となるCoA,TGA,TAPVCなどの疾患は,レベルIIの0.2-3%と少ない状況には変化がない.本口演では,レベルIをどのように丁寧に行うかで,スクリーニング感度を上げるかを考えてみたい.スクリーニングの本質は決して診断することにはないのであるからスクリーニング感度を上げることには,いかに正常のvarianceにないかを判断することにある.たとえば,縮窄部位を検出するのがむずかしいCoAの見落としを防ぐには,四腔断面や大血管の断面で左心室の大きさ,左右心室の比,大動脈の大きさ,大動脈/肺動脈比が正常範囲にないことをチェックするのが重要であろう.約20-25%以上の左右差があれば異常であるかもしれないと判断する.TGAでは,まず正確な四腔断面を描出することが大切で,ここから振り上げた,または平行移動したときの流出路が交差する関係に成っているかを確認することが必要で,このとき四腔断面が斜めだと交差がわかりにくくなる.右前からでる大動脈と左後ろからでる肺動脈を区別できるとなおよい.TAPVCの見落としを防ぐには,四腔断面B-modeで,左房に角があるようにみえるPVの還流部位を確認することが必要である.また左房と大動脈の距離が離れているかどうかを見るのも検出のヒントとなる.そしてこのPVと思われる部位にカラードプラをかけて確認するとなお確実であろう.しかし,カラードプラを盲信せずにB-modeで確認できなければ,当然異常を疑ってレベルIIに回す.このように,レベルIは正常variantからの逸脱を疑う検査という認識で感度をあげる努力をしてゆく必要がある.