Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム 産婦人科 1 胎児心臓超音波検査 見つけにくい心疾患をどう見つけるか?

(S370)

大動脈縮窄症の胎児診断における大動脈峡部逆行性血流の意義

Significance of retrograde blood flow of aortic isthmus for the screening of coarctation of the aorta by fetal echocardiography

川村 裕士1, 稲村 昇2, 河津 由紀子2, 萱谷 太2, 光田 信明1

Hiroshi KAWAMURA1, Noboru INAMURA2, Yukiko KAWAZU2, Futoshi KAYATANI2, Nobuaki MITSUDA1

1大阪府立母子保健総合医療センター産科, 2大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科

1Department of Maternal Fetal Medicine, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health, 2Department of Pediatric Cardiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【緒言】
大動脈縮窄症(Coarctation of the aorta; CoA)は,出生後に動脈管の閉鎖に伴って大動脈峡部の狭窄が進行すると,急速に心不全徴候が出現し,重症化する可能性がある.よって本疾患は出生前診断が重要であるが,胎児期のスクリーニングは容易ではない.一方,胎児期にCoAが疑われる症例の中で,大動脈峡部に逆行性血流を認める症例を経験するが,この逆行性血流とCoAの出生前診断について検討した報告は稀である.
【目的】
胎児心エコー検査において,Color Doppler法による大動脈峡部の逆行性血流と出生後のCoAとの関連を明らかにすること.
【方法】
2009年1月から2015年9月に,当センターでの胎児心エコー検査(胎児心エコーガイドラインでのレベルII精査に相当)でCoAが疑われた胎児において,Color Doppler法にて大動脈峡部に逆行性血流(retrograde blood flow of aortic isthmus; AoI-R)を認めた症例を対象とした.人工妊娠中絶,死産(胎児死亡),染色体異常,重篤な心外奇形,重篤な心内奇形(左心低形成,単心室),大血管転位型,AoI-Rが後の検査で消失した症例は除外した.AoI-Rは短軸断面(three vessel trachea view; 3VTV)もしくは長軸断面(aortic arch view)でColor Doppler法にて大動脈峡部に逆行性血流を認めた場合とした.AoI-Rに①検査時週数≦34週,②胎児発育不全,③小さい左室(hypo LV),④心室中隔欠損症(ventricular septal defect; VSD),⑤three vessel viewでの肺動脈径/大動脈径(PA/Ao)≧1.66,⑥3VTVでの大動脈峡部径/動脈管径(I/D)≦0.48を加え,①から⑥それぞれにおける検査所見の有無で,生後に外科的治療(Repair)を要したCoAの頻度を検討した.なお,①,⑤,⑥のカットオフ値はROC曲線を用いて求めた.検定はFisher直接確率検定を用い,p<0.05を有意とした.
【結果】
対象期間で胎児期にCoAが疑われた症例は55例であった.26例を除外した29例のうち,AoI-Rが確認された24例が解析対象となった.24例のうち生後にRepairを要したものは9例(37.5%)であった.①から⑥で有意にRepairの頻度が高かったものは,①検査時週数≦34週:(64%vs 15%)(p=0.03),④VSD:(83%vs 29%)(p=0.02),⑤PA/Ao≧1.66:(83%vs 22%)(p=0.02),⑥I/D≦0.48:(75%vs 19%)(p=0.02)であった.AoI-Rに検査時週数≦34週,VSDを組み合わせた場合のRepairに対する感度・陽性的中率・陰性的中率はそれぞれ78%・64%・85%,56%・83%・78%であった.
【結論】
大動脈峡部に逆行性血流を認めた症例の約4割で外科的治療が行われた.大動脈峡部の逆行性血流の評価は,大動脈縮窄症の胎児診断に役立つ可能性がある.