Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 Joint(JSUM・AFSUMB Joint Session)(English) びまん性肝疾患の超音波診断

(S363)

サルコぺニア診断に対する体外走査超音波検査の有用性

Transcutaneous ultrasonography for the diagnosis of sarcopenia in cirrhosis

小林 和史, 丸山 紀史, 清野 宗一郎, 近藤 孝行, 関本 匡, 嶋田 太郎, 高橋 正憲, 奥川 英博, 横須賀 收

Kazufumi KOBAYASHI, Hitoshi MARUYAMA, Soichiro KIYONO, Takayuki KONDO, Tadashi SEKIMOTO, Taro SHIMADA, Masanori TAKAHASHI, Hidehiro OKUGAWA, Osamu YOKOSUKA

千葉大学大学院医学研究院消化器・腎臓内科学

Department of Gastroenterology and Nephrology, Chiba University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
筋肉量は,肝疾患診療における重要な臨床因子である.その評価にはCTがしばしば使用されるが,長期経過を示す肝硬変患者では繰り返し計測可能な非侵襲的手法の導入が望まれる.今回,体外走査超音波検査によって腸腰筋面積を測定し,臨床所見との比較検討を行った.そして,サルコぺニア診断に対する超音波検査の有用性を考察したので報告する(IRB承認前向き臨床試験).
【対象】
2013年10月から2015年8月までの期間に,当院で超音波検査による腸腰筋面積の測定を行った肝硬変123例(67.3±9.6才;男性82女性41;BMI24.0±3.7)と健常人95例(63.2±13.8才;男性41女性54;BMI22.4±3.5)の計218例を対象とした.サルコぺニアについては既報に従い,CT画像上のL3領域のskeletal muscle index(L3-SMI)(男性<52.4cm2/m2,女性<38.5cm2/m2;Lancet Oncol2008)によって診断した(超音波とCTの検査間隔中央値4日).
【方法】
東芝メディカルシステムズ社のAplio XGあるいはAplio 500と,3.75MHzのコンベックスプローブを使用した.まず右下腹部横走査で腸骨動静脈を短軸像で描出した.次いで,その外側に存在する腸腰筋(IP)を同定し,IPの最大断面積(IP area,mm2)を計測した.そして,これを身長の二乗で除した値をIP index(mm2/m2)と定義した.またCT画像を用いて,超音波で描出したIPに対応する部位にて腸腰筋面積を測定し,両者の比較を行った.なお,超音波検査は原則として2名の術者で施行し,術者間の計測誤差についても検討を行った.
【結果】
1.超音波所見:IP indexは,健常例では男性355.4±153 mm2/m2,女性292.7±112 mm2/m2,肝硬変例では男性232.5±95 mm2/m2,女性239.9±90 mm2/m2であり,男女とも肝硬変例で有意に低値であった(男,p<0.001;女,p=0.015).また,IP計測におけるInterobserver variabilityは平均4.7%であった.
2.肝硬変例における検討
(1)超音波とCTとの比較:超音波とCTにおいて,対応する腸腰筋部位の面積の比較では,両者に有意な正の相関を認めた(r=0.948,p<0.001).また,L3-SMIとIP indexにも,男性(r=0.586,p<0.001),女性(r=0.688,p<0.001)ともに正の相関を認めた.
(2)サルコぺニアの診断能:L3-SMIから診断されたサルコぺニアは82例(66.7%,男性67,女性15)にみられた.IP indexは,非サルコぺニア群(男性336.7±96 mm2/m2;女性277.3±83 mm2/m2)に比べサルコぺニア群(男性209.2±79 mm2/m2,p<0.001;女性175.1±60 mm2/m2,p<0.001)で有意に低値であった.サルコぺニアに対するIP indexの診断能は,男性ではbest cut-off値254.4 mm2/m2において,感度79%,特異度87%,AUROC 0.87,また女性ではbest cut-off値229.1 mm2/m2において,感度87%,特異度77%,AUROC 0.85であった.多変量解析では,IP indexは男女ともにサルコぺニアの存在に関して独立した寄与因子であった(男性,オッズ比0.990,p=0.037;女性,オッズ比0.981,p=0.026).
【結論】
体外走査超音波検査によって得られた腸腰筋所見は,CTでの腸腰筋面積やL3-SMIと有意な相関を示した.また,IP indexはサルコぺニアの存在に対する有意な独立寄与因子であった.体外走査超音波検査によるIP indexの評価は,非侵襲的サルコぺニア診断法として極めて有用であり,CTの代替法として期待される.