Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 3 超音波所見と病理像の不一致例を見直す

(S360)

Desmoid腫瘍が伝えるメッセージ

Desmoid tumor: ultrasound image and pathology

長沼 裕子1, 小松田 智也2, 石田 秀明2, 榎本 克彦3, 石田 和之4, 藤沢 一哉5, 志賀  淳治6

Hiroko NAGANUMA1, Tomoya KOMATUDA2, Hideaki ISHIDA2, Katuhiko ENOMOTO3, Kazuyuki ISHIDA4, Kazuya FUJISAWA5, Jyunji SHIGA6

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院消化器科, 3秋田赤十字病院病理診断科, 4岩手医科大学病理診断学講座, 5津田沼中央総合病院検査科, 6津田沼中央総合病院病理部

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Pathology, Iwate Medical College, 5Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 6Department of Pathology, Tsudanuma Central General Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波像は腫瘍の音響学的性質を反映していると考えられる.最近経験したDesmoid腫瘍の超音波像を検討し,得られた知見を報告する.
【症例1】
30歳代男性.無症状.検診の超音波検査で左上腹部に腫瘤を指摘された.血液,生化学所見に異常なし.超音波検査で,膵体尾部に約10cmの腫瘤を認めた.腫瘤はa)境界明瞭,b)内部に点状エコーをわずかに含むが,ほぼ均一低エコー円形腫瘤,c)厚い外側音響陰影を呈し,d)僅かな後方エコー増強,を認めた.腹腔内に他の異常所見はみられず,この指摘病変の質的診断が診断の中心となった.超音波strain elastographyでは腫瘤は全体がほぼ均一に周囲組織より“硬い病変”として表現された.カラードプラ上腫瘤内には血流信号は僅かであったが,造影超音波では早期から病変全体がほぼ均一に淡く染まりその染まりは比較的長時間持続した.画像診断を総合しても質的診断のきめ手に欠き,患者本人の希望もあり膵体尾部切除術を施行.腫瘤は膵と連続し膵間質由来で,腫瘤の割面は乳白色で病変全体に線維化が強い事を示していた.腫瘤の主体は線維芽細胞でdesmoid腫瘍に一致する所見であった.
【症例2】
70歳代男性.高血圧と肝硬変があり,2年前に大腸癌切除術の既往あり.経過観察で施行された超音波検査で左上腹部に約5cmの腫瘤を認めた.腫瘤はa)境界明瞭,b)楕円形で内部ほぼ均一な低エコー腫瘤,c)明瞭な外側音響陰影を呈し,d)後方エコー増強,を認めた.腫瘤は腹腔内のどの臓器とも関連が無く,腫瘤の位置から腸間膜から発生した病変と考えられたが大腸癌切除の既往があり孤立性リンパ節転移なども否定できず,外科的切除が適応され腫瘤摘出術を施行.腫瘤は空腸腸間膜と連続していたがその近傍組織を含め切除可能であった.腫瘤の割面は乳白色で病変全体に線維化が強く,組織学的に腫瘤の主体は線維芽細胞でdesmoid腫瘍に一致する所見であった.
【考察】
Desmoid腫瘍は膠原組織を主体とし,細かい血管に富む腫瘍である.今回経験したDesmoid腫瘍は2例とも,ほぼ均一な低エコー腫瘤,後方エコー増強,明瞭な外側音響陰影という所見が共通していた.超音波所見の腫瘤全体がほぼ均一な低エコーを呈し,後方エコーが増強しているということより,腫瘤がほぼ均一な組織構成であるということ,内部に反射源となるものが少なく,超音波の減衰が周囲よりも少ないということを示唆している.外側音響陰影は一般的に,腫瘤内部の音速が周囲のそれよりも遅い場合は少しの音速差で内側に入り込むような外側音響陰影がみられるが,腫瘤内部の音速が周囲のそれよりも速い場合は,音速差が大きいほど明瞭になり,外側に広がる厚い外側音響陰影になる傾向がある1).明瞭で厚い外側音響陰影の存在は,腫瘤の境界が平滑で,腫瘤の周囲組織と音速がかなり異なり,腫瘤内部の音速が周囲よりも速いことを示唆していると考えられる.Desmoid腫瘍の過去の報告例は組織学的検討が中心であり超音波所見の記述があるものは比較的稀であるため,今後の検証が必要であるが,このような観点から,超音波所見から組織を推測することも可能と思われる.
【文献】
1)大野秀雄他.スフインクス型側方音響陰影症例の検討.日本超音波医学会第80回学術集会抄録集2007,S432.