Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 1(一部英語) 慢性膵炎の超音波診断

(S350)

慢性膵炎に合併した切除可能膵癌の診断-EUSの役割を中心に

Effectiveness of EUS in Diagnosis of Pancreatic Cancer concomitant with Chronic Pancreatitis

金 俊文, 潟沼 朗生, 真口 宏介

Toshifumi KIN, Akio KATANUMA, Hiroyuki MAGUCHI

手稲渓仁会病院消化器病センター

Center for Gastroenterology, Teine-Keijinkai Hospital

キーワード :

【背景】
慢性膵炎は膵癌のリスクファクターとして提唱されており,慢性膵炎の診療に際しては膵癌合併の有無に注意する必要がある.しかし,慢性膵炎合併膵癌の診断は困難な場合も多い.
【目的】
慢性膵炎合併膵癌の診断におけるEUSの役割について,切除例から検討する.
【対象】
1997年4月から2014年12月までに当センターで経験した切除膵癌345例のうち,慢性膵炎を合併していた10例(3%).年齢中央値は71(49-79)歳,男女比は8 : 2.膵癌の占拠部位は頭部6,体尾部4,腫瘍径はTS1 3,TS2 7,組織型は腺癌8,腺扁平上皮癌1,腺房細胞癌1,病期分類はStageI 3,II 1,III 5,IVa 1.
【検討項目】
1.診断時期と発見契機,2.術前の画像診断能,3.術前の病理診断能
【結果】
1.診断時期は初診時4,経過観察中6であり,有症状2(腹痛1,黄疸1),症状なし8(膵腫瘤指摘3,肝機能障害2,DM悪化1,AMY上昇1,CA19-9上昇1)であった.経過観察中に膵癌を指摘した6例の診断契機は,USでの腫瘤指摘2,CTでの腫瘤指摘4であった.2.US所見は,低エコー腫瘤の指摘4(40%),間接所見のみ4,所見なし1,未施行1であり,USにて膵癌を疑ったのは2例(20%)であった.CT所見は腫瘤の指摘8(80%),間接所見のみ2であり,うち4例(40%)で遅延濃染を伴う辺縁不整な腫瘤を指摘し膵癌と診断した.EUSでは,全例で腫瘤描出が可能であり,うち7例(70%)は辺縁不整な低エコー腫瘤の指摘により膵癌と診断した.残り3例のEUS所見は,境界不明瞭で腫瘤内のduct penetrating sign陽性2,腫瘤内部のエコー輝度が高い1,であり,膵癌としては非典型であったことから腫瘤形成性膵炎疑いと診断した.3.ERCP下膵液細胞診/膵管ブラシ細胞診を8例に施行し,陽性/疑陽性2(25%),陰性6を認めた.EUS-FNAは5例に施行し,全例で陽性を確認した.全体では7例(70%)で病理学的確証を得た上で外科切除を施行した.
【結論】
EUSの腫瘤指摘率,質的診断率はそれぞれ100%,70%とUS/CTより高率であるが,EUSによる質的診断が困難な症例も存在する.このため,EUS-FNAを含めた病理組織学的検査が必要である.