英文誌(2004-)
特別プログラム 消化器
ワークショップ 消化器 1(一部英語) 慢性膵炎の超音波診断
(S349)
早期慢性膵炎EUS所見の臨床的意義について
Estimation of EUS findings of early chronic pancreatitis in comparison with clinical symptoms
竹中 完
Mamoru TAKENAKA
近畿大学医学部付属病院消化器内科
Department of Gastroenterology and Hepatology, Kindai University Faculty of Medicine
キーワード :
【背景】
予後不良疾患である慢性膵炎の予後を改善すべく,2009年に新たに早期慢性膵炎(ECP)が提唱され,その診断に超音波内視鏡(EUS)は重要な役割を担っている.しかしECPのEUS画像所見と臨床症状,患者背景との関係や,ECPへの早期治療介入後の成績については未だ明らかではない.
【対象・方法】
今回それらを明らかにすべく,
検討①:当院にて2009年4月から2013年12月までにEUSを施行した5305例のうち,ECPのEUS画像所見Lobularity with honeycombing(L with H),Lobularity without honeycombing(L without H),Hyperechoic foci without shadowing(Foci),Strands,Cysts,Dilated side branches(DSB),Hyperechoic MPD margin(H-MPD)のいずれか2項目以上を呈した752例を対象とし,臨床症状((1)反復する上腹部痛,(2)膵酵素異常,(3)飲酒歴,(4)喫煙歴,および(5)DMの有無)とEUS画像所見数の比較を行った.
検討②:EPSと診断後に早期治療(カモスタットメシル酸塩またはパンクレリパーゼ投与)介入した39例を対象とし,症状改善率とEUS画像所見数の変化について検討した.
【結果】
①ECP確診例は11.2%(84/752)であった.臨床症状では(1)(2)(3)および(5)を有する症例で有意にEUS所見が認められ(p<0.05),EUS所見別の検討ではL with H,Strands,H-MPD陽性例に(1)(3)が有意に認められた(p<0.01).
②早期治療介入にて上腹部痛と膵酵素異常が改善した症例は41%(16/39)であった.改善後のEUS再検11例の検討では,ECP所見数は3.72±0.35から2.91±0.43に減少した.
【考察】
ECPの臨床症状を有する症例には有意にEUS画像所見が認められ,ECPの診断基準の妥当性が認められた.また早期治療介入群ではEUS画像所見数が減少しており,ECPの概念が慢性膵炎の予後に寄与する可能性が示唆された.