Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器 3 体外式超音波検査による膵スクリーニングの限界と対策

(S334)

体位変換,飲水法による腹部超音波での膵描出率の改善 MRI fusion法による検討

Improvement of pancreas identification by abdominal ultrasound with postural change and drinking technique, examination using MRI fusion imaging

三好 謙一, 孝田 雅彦, 杉原 誉明

Kenichi MIYOSHI, Masahiko KODA, Takaaki SUGIHARA

鳥取大学医学部機能病態内科学

Department of Multidisciplinary Internal Medicine, Tottori University School of Medicine

キーワード :

【背景】
膵疾患のスクリーニング検査として腹部超音波(AUS)が普及しているが,その検出率は満足できるものではない.その原因として,AUSによる膵自体の描出が十分でないことが挙げられる.描出率改善の工夫として体位変換や胃充満法が行われている.今回これらの方法の有用性をMRIのfusion画像を用いて検討した.
【目的】
AUSによる膵全域の描出率を調査した.また描出不良因子や体位変換,胃充満法の有用性を検討した.
【対象と方法】
対象は健常人20例(男性19例,女性1例,平均年齢33.2歳(25〜47歳),平均BMI22.9kg/m2(17.2〜29.9))であった.MRIとのfusion imagingを用いて膵臓の描出範囲を確認した.10例に対し胃充満法500mlを併用し,描出範囲を検討した.身体,血液検査所見,MRI計測値より膵描出因子を調査した.超音波装置はAplio500(TOSHIBA),MRIはMAGNETOM Skyra 3.0T(SIEMENS)のVIBEを用いた.本研究は鳥取大学倫理委員会の承認を得た.
【結果】
仰臥位走査のみでは膵臓各部位の描出率は頭部85%,体部70%,尾部55%,膵臓全体が描出できたのは55%であった.右側臥位走査を加えると描出率はそれぞれ85%,95%,85%と体尾部で描出率が上昇した.膵臓全体の描出は75%であった.次に胃充満法を加えると,描出率はそれぞれ95%,100%,95%と頭部尾部で描出率がさらに上昇した.全体では90%(18/20 P=0.013)となり,仰臥位走査のみと比較し有意に全描出率が改善した.しかし,これらの工夫を加えても,頭部,体尾部移行部は描出困難な例があった.仰臥位のみ,右側臥位走査での膵全描出に関与する因子につきロジスティック回帰分析で検討したが,血液検査,MRIより算出した膵体積,皮下脂肪量,内臓脂肪量を含め有意な因子は抽出されなかった.
【結語】
MRIとのfusion imagingを用いることでAUSによる膵描出域を正確に評価した.仰臥位走査のみでは膵全体の描出は55%と低率であったが,体位変換,胃充満法を用いることによって,体尾部を中心として描出率が改善した.膵癌早期発見のため,これらの方法を含め,AUSの描出法をさらに工夫する必要がある.
図1.同期させた膵尾部のマーカーが描出野に含まれている