Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器 3 体外式超音波検査による膵スクリーニングの限界と対策

(S334)

ポジションセンサーとCT-fusion画像を使用した体外式超音波検査の膵尾部描出能の検討

Evaluation of the pancreatic tail observable limit of transabdominal ultrasonography using a position sensor and CT-fusion image

鷲見 肇1, 廣岡 芳樹2, 川嶋 啓揮3, 大野 栄三郎2, 石津 洋二3, 葛谷 貞二3, 本多 隆3, 中村 正直3, 春田 純一1, 後藤 秀実2, 3

Hajime SUMI1, Yoshiki HIROOKA2, Hiroki KAWASHIMA3, Eizaburo OHNO2, Yoji ISHIZU3, Teiji KUZUYA3, Takashi HONDA3, Masanao NAKAMURA3, Junichi HARUTA1, Hidemi GOTO2, 3

1名古屋第一赤十字病院消化器内科, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部, 3名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学

1Gastroenterology, Japanese Red Cross Nagoya Daiichi Hospital, 2Endoscopy, Nagoya University Hospital, 3Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
画像に関心領域をマーキングしその空間位置情報を表示する機能(GPS機能),リアルタイムにCT画像を同期させる機能(CT-fusion機能)を搭載した超音波診断装置(GE社製LOGIQ E9)を用い膵尾部描出能および膵尾部描出に関与する因子を検討した.また,体位による膵尾部描出能を検討した.
【対象と方法】
2011年11月から2013年1月に膵胆道疾患症例で精査のためMDCT検査を施行しGPS機能,CT-fusion機能を用いてUSを施行した39例を対象とした.検討項目:1)①膵全長,②膵尾部描出不能距離,③膵全長に占める描出不能領域の割合を計測した.①CT-fusion機能により,US画像と同期しUSで表示される画像と同一のCT断面像がUS画像と並列表示される.CT画像で膵が最大長となるよう描出し,膵全長を計測した.膵全長は門脈左縁を目印に頭部から門脈左縁と,門脈左縁から体尾部の直線距離の和と定義した.②USを用いた心窩部横走査による膵尾部の観察で,描出可能な膵の最尾側を描出限界点(target point:TP-US)としGPS機能を用いマーキングした.USでマーキングしたTPは,並列したCT画像上にもUS画像と対応する位置にマーキングされ,USでは観察不可能な領域をCT画像で確認することが可能となる.CT画像上のマーキングポイント(TP-CT)から膵尾端までの距離(膵尾部描出不能距離)を計測し,③膵全長における割合(膵描出不能領域)を算出した.膵尾部観察に影響し得る因子として,身体所見と糖・脂質代謝の指標となる各種血液検査所見との関連を検討した.2)左肋間走査による脾門部からの膵尾部描出能を検討した.US画像をCT-fusion画像と比較し,a)膵尾部が同定できるもの,b)同定は困難であるが膵尾部の存在が疑われるもの,c)アーチファクトにより描出不良なものの3群に分類し,aを同定可能,aとbを観察可能とした.3)体位変換による膵尾部描出能を検討した.39例のうち膵頭体部にメルクマールとなる病変のある8例に対して,心窩部横走査により各体位(正面臥位,右側臥位,左側臥位,座位)におけるメルクマールとTP-USとの距離を計測した.US画像で病変が最もよく観察できるよう描出し,最尾端にGPS機能を用いマーキングした.次にマーキングポイントからTP-USまでの距離を計測した.US画像において,正面臥位におけるメルクマールとTPとの距離と各体位における距離の差を計測し,体位による膵尾部の描出能を検討した.
【成績】
1)39例の膵全長は160.9±16.4mm,膵尾部描出不能距離は41.0±17.8mmであった.膵描出不能領域は25.3±10.4%であった.膵尾部描出不能領域に影響する因子として,BMI,腹囲に相関を認めた(Pearson test 0.446;P=0.004,0.354;P=0.027).血液検査所見で膵尾部描出に影響する因子は認めなかった.2)脾門部からの観察では,膵尾部は22例(56%)で観察可能であった.13例(33%)ではUSで膵尾部が同定可能であった.3)各体位におけるメルクマールからTPまでの距離と正面臥位における距離との差は,右側臥位で正面臥位より描出長が長くなる傾向であった(右側臥位:3.3±14.6mm,左側臥位:-6.5±16.5mm,座位:-2.1±12.6mm).また各体位における描出距離の差と,身体所見,血液検査所見,膵全長,描出不能領域との間には,座位において膵描出不能領域と正の相関を認めた(Pearsonの相関係数0.712;P=0.048).
【結論】
USによる膵尾部観察に際し心窩部横走査で約25%の死角が存在しBMI,腹囲と相関する.左肋間走査を加えることで膵尾部は56%で観察可能となり膵描出能が向上した.膵尾部の観察では右側臥位で描出が向上する傾向があり,特に膵尾部観察が困難な場合は座位が有効である.