Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション 消化器 2(一部英語) 脂肪肝の画像診断

(S331)

MRIによる肝脂肪率の定量

MR-based measurement of liver fat

本杉 宇太郎

Utaroh MOTOSUGI

山梨大学放射線医学講座

Radiology, University of Yamanashi

キーワード :

脂肪を画像化することは,MRIの最も得意とするところである.MRI の信号はプロトン(水素原子)から得られる.しかし,体内に存在する種々の化合物のうちで,MRIの信号として取得することができるのは主に水分子と脂肪分子を構成するプロトンのみである.水分子と脂肪分子のプロトンは互いに異なる回転周波数を持つため,MRIでは両者の信号を区別することができる.すなわち,対象組織中に含まれる水と脂肪の比率を容易に計算することができる.これをMRIでは脂肪率fat fractionと呼ぶが,その定義はプロトンの数(密度)に換算した脂肪率である(proton density fat fraction[PDFF]).
水分子のプロトンと脂肪分子(正確にはメチレン基)のプロトンを比べると,水分子のプロトンの方が約3ppm(100万分の3)だけ高い周波数を持つ.そのため,励起パルスで同位相となった水と脂肪のプロトンは,その後時間とともに位相がずれていき互いに逆位相となる瞬間と同位相となる瞬間が交互に訪れる.肝のMRIでは,in phase撮像とopposed phase(out of phase)撮像がルーチンで行われているが,ここでin phaseとは水と脂肪が同位相であることを示し,両者の信号は互いに合算されて画像化される.一方opposed phaseとは水と脂肪が逆位相であることを意味し,両者の信号は打ち消しあう.すなわち,肝臓に脂肪が蓄積(脂肪肝)されると,opposed phaseの信号はin phaseの信号より低くなる.これをchemical shift imagingと呼び,従来から脂肪肝の診断に用いられてきた.近年,このchemical shift imagingを用いて脂肪率を定量する技術が開発され臨床機でも利用可能となっている(chemical shift-encoded PDFF[CSE-PDFF]).
同位相・逆位相と言うと,脂肪の周波数ピークは1つであるかのように錯覚してしまうが,実は脂肪の周波数ピークは単一ではない(メチレン基のプロトンとメチル基のプロトンは異なる周波数を持つ).それは脂肪率測定を難しくする因子でもあるが,同時に新たな可能性を持つことをも意味する.
ここではCSE-PDFFの基本的事項を概説し,基礎的および臨床的検討が行われた最近の文献をレビューする.最後にMRIを用いた脂肪測定の今後の展望についても触れたい.