Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器 3 胆膵疾患の造影エコー診断up-to-date

(S318)

造影ハーモニックEUSの定量的血流評価による膵腫瘍診断

Characterization of pancreatic tumors with quantitative perfusion analysis in contrast-enhanced harmonic EUS

大本 俊介, 北野 雅之, 工藤 正俊

Shunsuke OMOTO, Masayuki KITANO, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部附属病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kindai University of Medicine

キーワード :

【目的】
膵腫瘍性病変に造影ハーモニックEUSにてTime intensity curve(TIC)を作成し,腫瘍の血流の定量化を試みた.
【方法】
CTや腹部エコーなどの検査にて膵腫瘤性病変を指摘された症例を対象として,造影ハーモニックEUSを実施した.膵腫瘤性病変に対して,造影専用モード(ExPHDモード)を用いて,送信周波数=4.7MHz,MI=0.30,Frame rate=10fpsに設定し,ソナゾイド® 15μl/kg投与後70秒間撮像した.得られた画像は専用のソフトウェアを用いて膵腫瘍を覆うようにROIを設定し,ROI内のエコー輝度の変化を観察した.ソナゾイド®投与前の音圧をBaseline intensity,投与後の最高音圧をPeak intensity,Peak intensityとBaseline intensityの差をIntensity gain,ソナゾイド®投与からPeak intensityまでの時間をTime to peak,60秒後のエコー輝度をI60,Peak intensityから60秒までの減衰率をReduction rateとして,それぞれのパラメータ値を,膵癌,膵神経内分泌腫瘍,腫瘤形成性膵炎,その他の膵腫瘤の間で比較検討した.また,各パラメータによる膵癌診断能をROC解析にて比較した.
【結果】
膵癌41例,膵神経内分泌腫瘍14例,腫瘤形成性膵炎14例,その他の膵腫瘤7例の計76例においてTICを作成した.膵癌のPeak intensityとI60はその他の膵腫瘤と比較して有意に低く(P<0.05),Reduction rateは膵癌は膵神経内分泌腫瘍と比較して有意に大きかった(P<0.05).膵癌診断におけるROC曲下面積は,Baseline intensity,Peak intensity,Intensity gain,Peak intensity,Time to peak,I60,Reduction rateでそれぞれ,0.664,0.810,0.751,0.845,0.777,0.725であった.
I60は膵癌の診断に最も有用なパラメータでありカットオフを12.4dB未満とするとその診断能は,感度92.7%,特異度68.6%,オッズ比27.36であった.
【結論】
造影ハーモニックEUSにより作成したTICを検討することで膵癌は他の腫瘍と比較して特徴的な血流動態を示すことが判明した.膵腫瘍において定量的な血流評価を行うことは,膵癌とその他の膵腫瘤性病変の鑑別診断に有用であり,I60は最も優れた診断能を有するパラメータであった.また,画像パターンによる鑑別診断においても,ソナゾイド®投与後60秒後での画像評価が膵癌診断に有用であることが示唆された.