Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器 3 胆膵疾患の造影エコー診断up-to-date

(S317)

膵癌早期診断のための造影超音波検査

Contrast-enhanced US for the detection of pancreatic cancer in an early stage

福田 順子1, 仲尾 美穂1, 岡垣 すえつみ1, 山中 宏美1, 中尾 恵子1, 高倉 玲奈2, 田中 幸子3, 蘆田 玲子1, 井岡 達也1, 片山 和宏1

Junko FUKUDA1, Miho NAKAO1, Suetsumi OKAGAKI1, Hiromi YAMANAKA1, Keiko NAKAO1, Rena TAKAKURA2, Sachiko TANAKA3, Reiko ASHIDA1, Tatsuya IOKA1, Kazuhiro KATAYAMA1

1地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター検診部, 2大阪がん循環器病予防センター内視鏡検診部, 3大阪がん循環器病予防センター所長

1Dept. Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 2Department of Endoscopy, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention, 3The Head, Osaka Center for Cancer and Cardiovascular Disease Prevention

キーワード :

膵癌の典型的な超音波所見は,尾側膵管の拡張を伴う低エコー腫瘤像として表現される.しかし,根治可能な膵癌を超音波で検出するためには,このような典型像を呈する前に拾い上げる必要がある.我々は膵癌高危険群である膵嚢胞や主膵管拡張を認める症例を登録し,膵に特化した膵精密超音波検査(膵US)で厳重な経過観察を行い,多数の早期の膵癌を診断してきた.この中で得られた知見として,早期の膵癌を発見するには嚢胞内や主膵管内の結節像と同様に,膵実質内の10mm以下の小さな低エコー像の拾い上げが非常に重要であると考えた.検出された低エコー像の確定診断にはEUS-FNAやERCPが必要となるが,どちらも侵襲的な検査である.そのため超音波で拾い上げた病変に対し,直ちに侵襲的な検査を行う必要性の判断に,まずは体表からの造影超音波検査(造影US)を活用している.
【目的】
膵実質内の10mm以下の低エコー像の出現を指摘した症例に対して,侵襲的な検査を必要とする症例の選択における造影USの有用性を検討する.
【対象】
2007年1月から2015年3月までに膵癌高危険群の経過観察や膵精査目的の検査として実施した膵USで,膵実質内に10mm以下の低エコー像を認め,造影USを行った120例(男51,女69,年齢33-84,平均66.9歳)を対象とした.低エコー像の最大径は3-10mm(平均7.9mm)であった.
【方法】
造影剤は転移性肝癌の存在診断ないし肝限局性病変の鑑別を主目的として文書による同意の上ソナゾイド®を使用した.1回の投与量は0.010 ml/kgまたは0.015ml/kgで,1例に対し1ないし2回投与して血管相での膵病変の観察を行った.約10分後の後血管相で肝の観察を行い,欠損像を認めた場合には再投与して肝病変の診断を行った.使用機種はAplio500(東芝),LOGIQ7(GE),Ascendus/EUB8500(日立),MIは0.20付近,Focusは関心病変の下端からやや深めに設定,周囲膵実質との比較でhypo vascular,iso vascular,hyper vascularに分類した.
【結果】
120例の造影US所見は,hypo vascular52例,iso vascular62例,hyper vascular6例であった.hypo vascular52例中ERCPまたはEUS-FNAを29例に実施し,16例(55.2%)が膵液細胞診(PJC)またはEUS-FNAで悪性と診断され,内12例に切除手術が行われた.切除膵癌の内訳は通常型膵癌8例,IPMN由来癌4例で,stage0が2例,Ⅰが7例,Ⅲが3例であった.膵癌切除例での他検査は,EUSとCTは全例,MRは5例に実施されたが,癌を疑うSOLを指摘できたのは,EUSは12例(100%),CTは2例(16.7%),MRは1例(20%)であった.この他,膵液細胞診でsusp.の1例に切除手術が行われたがIPMNであった.膵液細胞診またはEUS-FNAで悪性が否定された12例とそれらを未実施の23例は経過観察中である.iso vascularの62例中2例に切除手術が行われ,1例はIPMN,1例は神経内分泌腫瘍(NET),4例はEUSでNET疑いと診断された.また,その後のUSでは低エコー像を指摘しなかったが,膵嚢胞を有するためUS等で経過観察をしていたうちの1例は,5年後に膵嚢胞の尾側膵管が拡張しERCPを実施,PJC陽性,治療予定である.hyper vascularの6例中1例に切除手術が行われNET,残る5例中1例はNET疑い,4例は膵炎等を疑って経過観察中である.iso vascularとhyper vascularで手術例や治療予定例を除く64例中58例が画像検査で経過観察中(観察期間3-101,平均40.5ヶ月)であるが,悪性と診断された症例はまだない.
【結語】
10mm以下の低エコー像の出現を指摘した症例において,造影USでhypo vascularな病変から,早期の膵癌を発見することが可能であった.侵襲性の高い精査への症例選択に対して,造影USは有用であると考える.