Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器 2(一部英語) 消化器領域におけるエラストグラフィーの最先端

(S313)

術中超音波elastorgaphyによる胃・大腸癌のリンパ節転移の判定及び硬度測定について

Evaluation of lymph node metastases and stiffness of gastric and colorectal cancer by intraoperative elastography

石川 正志, 江藤 祥平, 田代 善彦, 松山 和男, 大塩 猛人

Masashi ISHIKAWA, Shouhei ETO, Yoshihiko TASHIRO, Kazuo MATSUYAMA, Taketo OOSHIO

学校共済組合四国中央病院外科

Surgery, Shikoku Central Hospital

キーワード :

病変の悪性度と組織の硬さには相関があることが知られており,これまで術中の消化管の腫瘍の悪性度や附属リンパ節診断では触診での硬さが,診断の重要な要素であった.しかし,消化管の癌の硬さを絶対値として表した報告はほとんど見られず,どのような因子が腫瘍の硬さを規定しているかも不明である.またリンパ節転移の有無の判定は,これまで主に術者の触診が現実的には最終診断となることが多かったが,リンパ節の郭清範囲を決める要因ともなり,術式決定まで影響を及ぼすことになる.最近消化管の手術は腹腔鏡補助下になりつつあるが,腹腔鏡下手術での皮切は最大5cm程度であり,術中触診は不可能に近く,以前よりも触診以外での正確で簡便なリンパ節転移の判定法が求められている.そこで我々は,術中超音波elastographyを消化管癌の手術に臨床応用し,術中超音波elastographyがLN転移の診断に有効なことを報告してきた.今回症例をさらに積み重ね,進行胃・大腸癌を対象として腫瘤の硬さについても評価し,硬さを規定する因子について検討した.
【対象と方法】
過去3年間に当院で進行胃・大腸癌の手術をうけた70例(胃癌28例,大腸癌42例)を対象とした.術中超音波elastographyは日立アロカの超音波機器(AVIUS)を用い,脂肪層,リンパ節,腫瘍のひずみをそれぞれB,A,Cとして,B/A比及びB/C比を算出しstrain ratioで客観的に評価した.また,術前CT所見,術中の外科医による視触診診断についても同様に病理診断と比較した.さらにB/C比と腫瘍の肉眼的所見および病理所見を比較検討した.
【結果】
LN転移は胃癌で15例,結腸癌で18例見られた.胃癌は平均年齢70.8歳,StageⅠ9例,Ⅱ7例,Ⅲ6例,Ⅳ6例,大腸癌は平均年齢71.2歳,StageⅠ11例,Ⅱ13例,Ⅲ15例,Ⅳ3例であった.胃癌ではLN転移の感度,特異度,正診率はCTでそれぞれ64%,100%,81%で,術中視触診による診断では78%,100%,88%であった.一方結腸では感度,特異度,正診率はCTでそれぞれ41%,86%,67%で,術中診断では41%,91%,69%であった.LNのElastographyの比は胃癌症例では転移+で6.9±4.4,転移−で1.6±0.6であり,大腸癌ではそれぞれ5.6±4.7,1.6±0.5で有意差がみられた.elastographyのcut off値を2.0とするとLN転移の感度,特異度,正診率は胃癌でそれぞれ100%,92%,96%で,結腸癌で94%,77%,82%と他の診断法に比べ最も良好となった.一方,胃癌および結腸癌のB/C比は5.5±4.4,5.4±4.8で有意差は見られなかった.腫瘍のマクロ所見とB/C比を検討すると腫瘍の大きさ,壁深達度,病期,リンパ節転移の有無等はB/C比と相関は見られなかった.腫瘍のミクロ所見とB/Cを検討すると腫瘍の間質(med<int),INF(a<b<c),ly(0<1<2+3),V(0+1<2+3),組織型(tub1<por)でそれぞれ有意差が見られた.また胃癌のBor4型は4例見られたが,B/C比は2型や3型に比べ有意に小さかった(3.1±1.6 vs 5.9±4.1).
【結語】
超音波Elastographyは他の診断法よりリンパ節転移の検出に有用で,至適術式の決定に役立つと思われる.腫瘍の硬さを規定する因子は,腫瘍の間質量,浸潤様式,組織型であった.スキルス胃癌は硬がんといわれるが,実際は通常の胃癌よりは柔らかかった.