Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器 2(一部英語) 消化器領域におけるエラストグラフィーの最先端

(S310)

C型肝炎におけるShear wave elastographyの意義(未治療群とウイルス排除群での比較)

Shear wave elastography in hepatotisC;Comparison of patients before antiviral therapy and patients with a sustained virological responce

須田 季晋, 大川 修, 須藤 梨音, 行徳 芳則, 徳富 治彦, 玉野 正也

Toshikuni SUDA, Osamu OKAWA, Rion SUDOU, Yoshinori GYOTOKU, Naohiko TOKUTOMI, Masaya TAMANO

獨協医科大学越谷病院消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University, Koshigaya Hospital

キーワード :

【目的】
Shear wave elastography(SWE)は,組織中のShear wave(SW)伝搬速度を測定することによって組織の弾性を計測する技術であり,びまん性肝疾患における線維化の推測に有用である.今回は未治療のC型肝炎症例と,ウイルス排除後の症例でSWEを施行し,それぞれの病態におけるSW伝搬速度の意義を検討することを目的とした.
【対象】
C型肝炎症例216例を対象とした.抗ウイルス療法未治療症例(未治療群)が136例,インターフェロン療法または経口直接作用型抗ウイルス療法によって3カ月以上の持続的なウイルス排除が達成された症例(SVR群)が80例である.脂肪肝,自己免疫性疾患,慢性心不全,膠原病,および肝細胞癌合併例は対象から除外した.
【方法】
SWEの測定にはGE Healthcare社のLOGIQ E9を用いた.測定は空腹時に背臥位でBモード観察下に右肋間から行い,測定値はSWの伝搬速度(m/s:以下Vs)で表され,得られた10回の計測値の中央値を検討に用いた.この際,測定成功率80%以下の症例と測定値のばらつきが30%以上の症例は検討から除外した.未治療群とSVR群におけるVsと年齢,ALT,総ビリルビン,アルブミン,血小板,プロトロンビン活性(PT%),4型コラーゲン,プロコラーゲンⅢペプチド(PⅢP),ヒアルロン酸について相関関係を検討した.
【結果】
SVR群は未治療群に比して有意に年齢が若く,ALT,PⅢP,ヒアルロン酸が低値であり,アルブミン,血小板が高値であった.Vsの平均値は未治療群で1.63±0.32 m/s,SVR群で1.54±0.321m/sであり,両群間に有意差を認めなかった.両群ともにVsと年齢,総ビリルビンには相関を認めなかった.未治療群ではVsとALTの間に弱い相関を認め(r=0.4961),アルブミン(r=0.5053),血小板(r=0.5451),PT%(r=0.6460)と比較的強い負の相関を認めた.4型コラーゲン(r=0.4765),PⅢP(r=0.4139),ヒアルロン酸(r=0.4894)とは弱い相関を認めた.SVR群ではVsとALTとの間に相関を認めず,血小板(r=0.4566),PT%(r=0.3320)と弱い負の相関を認めた.4型コラーゲン(r=0.5580),PⅢP(r=0.6242),ヒアルロン酸(r=0.5476)とは比較的強い相関を認めた.
【考察】
SWの伝搬速度は組織の弾性のみで決まるのではなく,粘性にも影響される.すなわち活動性の肝炎の場合は間質への浸出液の増加や細胞浸潤によって組織の粘性が増加して伝搬速度が速くなると予測される.未治療群ではALTが高値を呈する活動性肝炎が多く含まれ,Vsは肝炎の活動性(粘性)と線維化(弾性)の両者を反映し,結果としてアルブミン,PT%などの肝予備能と正の相関を呈したと考えた.一方でSVR群では肝炎は3カ月以上にわたり沈静化しており,Vsはほぼ純粋に肝の線維化(弾性)を反映したものと推測され,このため線維化のバイオマーカーと良好な相関を呈したものと考えられた.
【結論】
持続的ウイルス排除後のC型肝炎ではVsは肝線維化の良好な指標である.ウイルス排除前のVsは線維化のみではなく肝炎の活動性を反映し,結果として肝予備能の指標となり得る可能性が示唆された.