Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 消化器
シンポジウム 消化器 2(一部英語) 消化器領域におけるエラストグラフィーの最先端

(S308)

肝疾患におけるエラストグラフィーの今後の役割について

The role of elastography for chronic liver disease

斎藤 聡1, 伝法 秀幸2, 濱田 晃市3

Satoshi SAITOH1, Hideyuki DENPO2, Koichi HAMADA3

1虎の門病院肝臓センター, 2虎の門病院分院臨床検査部, 3総合南東北病院消化器科

1Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 2Department of Clinical Raboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 3Department of Gastroenterology, Southern Tohoku General Hospital

キーワード :

【目的】
肝臓のエラストグラフィーはC型慢性肝炎の線維化評価法として2004年ごろよりフィブロスキャン(TE)が肝生検の代替検査として登場し,その後各種,shear wave elastography(SWE)が登場した.その間,HBVとHCVに関する治療の進歩から,慢性肝炎のみならず,肝硬変までをもウィルスのコントロールないしは駆除が可能となり,線維化の評価が治療適応とはならない状況にある.また,大部分の症例で,ウィルスのコントロールないしは駆除後の肝硬度測定の意義が見直されようとしている.そこで,各種エラストグラフィーによりウィルス性慢性肝疾患の治療前後の肝硬度評価,また,今後肝生検でしか診断困難であったNAFLDの線維化評価に関してエラストグラフィーの意義を検討した.
【対象と方法】
対象はTEのべ19325件,Virtual Touch Quantiofication(VTQ)のべ4323件とAixplorer(A-SWE)のべ2834件のなかでウィルス性慢性肝疾患は経時的に治療前後およびフォローアップして肝硬度測定を施行した症例である.一方,NAFLDは病理学的な検討をしえた症例である.
【成績】
1.C型慢性肝疾患:経口2剤治療458例では治療終了時,6ヶ月経過で各々低下率はTEで15%,35%,VTQは13%,28%であった.インターフェロンを含む治療の161例では治療終了時,6ヵ月後のA-SWEの低下率は12%,30%であった.以後,肝硬度は5%/年の持続的な低下をみた.以上は全てSVR症例に限定した.一方,SVRに至らない症例では低下率は治療終了時,6ヶ月経過時で各々,5%,3%でそれ以後は上昇に転じた.SVR例では何れも良好な低下率であり,単なる線維化の改善よりも炎症の改善の影響が大きい可能性が考えられた.2.NAFLD:組織学的診断のある108例でTEにてMプローブとXLプローブ併用では,中央値が各々,F0:3.2kPa,F1:3.8kPa,F2:5.8kPa,F3:7.7kPa,F4:11.9kPaであり,NAFLとNAFLDの鑑別は困難であったが,F3以上はカットオフ値が6.8kPaでAUROCは0.956,F4はカットオフ値が10.5kPaでAUROCは0.920であり,NAFLDの線維化進行例の拾い上げには有用であった.
【結論】
エラストグラフィーはウィルス性慢性肝疾患の病態把握とNAFLDの線維化評価に有用である.