Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
ワークショップ 循環器 負荷心エコー検査をもっと身近に

(S291)

ハンドグリップ負荷心エコー検査が有用であった心房細動合併慢性心不全の1例

Handgrip stress echocardiography for heart failure with atrial fibrillation: A case report

西條 良仁1, 山田 博胤1, 楠瀬 賢也1, 林 修司2, 鳥居 裕太2, 天野 里江2, 山尾 雅美2, 西尾 進2, 添木 武1, 佐田 政隆1

Yoshihito SAIJO1, Hirotsugu YAMADA1, Kenya KUSUNOSE1, Shuji HAYASHI2, Yuta TORII2, Rie AMANO2, Masami YAMAO2, Susumu NISHIO2, Takeshi SOEKI1, Masataka SATA1

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【はじめに】
ハンドグリップ負荷は,心エコー検査中に後負荷増大に対する心反応性を評価することができる簡便で安全な方法である.
【症例】
79歳女性.主訴:夜間発作性呼吸困難および労作時呼吸困難.既往歴:高血圧,慢性心房細動.現病歴:慢性心不全の急性増悪のため当科入院となった.利尿剤及び血管拡張薬で加療を施行し循環および呼吸状態は安定していたが,軽労作による呼吸困難が残存していた.安静時経胸壁心エコー検査では,左室駆出率は33%と著明に低下していたが,左室拡張末期圧の上昇や肺高血圧を示唆する所見は認めなかった.労作時呼吸困難の原因究明を目的にハンドグリップ負荷心エコー検査を施行した.最大握力の50%で5分間のハンドグリップ負荷(10kg)を施行したところ,体血圧の上昇(105/61 mmHg→128/95mmHg)に伴い,三尖弁圧較差の増大(16→38 mmHg)と拡張早期僧帽弁口速度の減衰時間も短縮(186→150 msec)を認めた.治療効果判定のため右心カテーテル検査時にも同様にハンドグリップ負荷を施行したところ,大動脈圧の上昇(107/62→121/80 mmHg)に伴い,肺動脈楔入圧(14→24 mmHg),肺動脈収縮期圧(32→44 mmHg)の上昇を認めた.後負荷の増大により容易に肺高血圧を生じることから心不全治療は不十分と判断し,β遮断薬を増量した.治療2週間後に再度ハンドグリップ負荷右心カテーテル検査を施行したところ,大動脈圧(127/74→129/74 mmHg),肺動脈楔入圧(7→9 mmHg),肺動脈収縮期圧(22→26 mmHg)と心不全兆候を認めず,軽労作による呼吸困難も改善した.退院後も心不全の再発なく良好な経過である.
【考察】
本症例は,心房細動を合併した慢性心不全例であり,心エコードプラ法による血行動態の評価が困難であった.そこで,ハンドグリップ負荷心エコー検査を施行したところ,後負荷増大により肺高血圧を来すことが判明した.その血行動態は,右心カテーテル検査で確認でき,心不全の治療後にはハンドグリップ負荷に対する心反応性も改善した.