英文誌(2004-)
特別プログラム 循環器
ワークショップ 循環器 負荷心エコー検査をもっと身近に
(S290)
弁膜症における負荷心エコー
Stress Echocardiography in Valvular Heart Disease
鈴木 健吾
Kengo SUZUKI
聖マリアンナ医科大学循環器内科
Division of Cardiology, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine
キーワード :
2012年4月から負荷心エコーが保険収載された.負荷心エコーには安静時心エコーでは評価困難な所見が多く隠れており,その有用性は欧米を中心に高く評価されている.これまでの負荷心エコーは,虚血性心疾患における局所壁運動の評価が主であったが,弁膜症においても負荷心エコーの有用性が多く報告されている.Magneらは無症候性高度僧帽弁逆流患者78名に対して運動負荷心エコーを実施し,運動負荷により僧帽弁逆流量が増加し,推定肺動脈収縮期圧が56mmHg以上に上昇すると,2年以内の症状出現が予測可能であり,手術適応を判断するための有用な指標であることを報告している(Circulation.2010;122:33-41).またLancellottiらは無症候性高度大動脈弁狭窄患者において運動負荷心エコーを実施し,運動誘発性肺高血圧(推定肺動脈収縮期圧>60mmHg)を呈する症例において有意に心血管イベントが生じるリスクが高く,運動負荷心エコーが有用であると報告している(Circulation.2012;126:851-9).弁膜症の診療において,無症状であっても高度であれば早期に手術をすべきという意見があるが,一方では慎重に経過を観察し自覚症状が出現するか,あるいは心機能が低下してきた時に手術を行うべきとの意見もあり手術至適時期について悩むことが多い.その際に運動負荷心エコーを追加し運動誘発性肺高血圧を評価することは手術適応を判定する上で有用と思われる.我々の施設においても無症候性高度僧帽弁逆流患者に対して積極的に運動負荷心エコーを実施し,さらに心肺運動負荷試験も併用し運動耐容能との関係を検討している.これまでの当院の結果では,無症状であっても運動耐容能が極めて低下した症例を約25%に認めており,主観的指標だけではなく,客観的指標による評価が必要と考えられた.当院での運動負荷心エコーの実際を踏まえて弁膜症における運動負荷心エコーの有用性を述べる予定である.