英文誌(2004-)
特別プログラム 循環器
ワークショップ 循環器 負荷心エコー検査をもっと身近に
(S289)
運動負荷誘発性肺高血圧症の診断基準:肺動脈圧上昇のみで診断してよいか?
Criteria for Exercise-induced Pulmonary Hypertension
山田 博胤1, 2, 楠瀬 賢也1, 西條 良仁1, 瀬野 弘光1, 西尾 進2, 天野 里江2, 鳥居 裕太2, 平田 友紀奈2, 鈴川 理乃2, 佐田 政隆1, 2
Hirotsugu YAMADA1, 2, Kenya KUSUNOSE1, Yoshihito SAIJO1, Hiromitsu SENO1, Susumu NISHIO2, Rie AMANO2, Yuta TORII2, Yukina HIRATA2, Rino SUZUKAWA2, Masataka SATA1, 2
1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター
1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital
キーワード :
【背景】
膠原病患者が肺高血圧を合併すると予後が極めて不良となるため,肺高血圧を早期に診断し治療介入することが重要である.運動負荷誘発性肺高血圧症(EIPH)は,顕性肺高血圧の前駆段階と考えられているが,その診断基準は定まっていない.我々は,運動負荷心エコー検査を用いて,6分間歩行負荷後のEIPHを検出するための診断基準について検討した.
【方法】
6分間歩行運動負荷心エコー検査を施行し,その後の長期経過が観察できた膠原病78例(平均年齢58+12歳,女性91%)を対象とした.安静時および6分歩行後に三尖弁圧較差を計測し平均肺動脈圧(各Pre-mPAP,Ex-mPAP)を推定,その変化(ΔmPAP)を算出した.また,インピーダンス心拍出計(AESCULON mini)を用いて運動による心拍出量の変化(ΔQ)を計測した.エンドポイントは,右心カテーテル検査による安静時のmPAP≧25 mmHgとした.
【結果】
平均32か月の観察期間で,16例がエンドポイントに到達した.ROC解析により,Ex-mPAP>26 mmHgおよびΔmPAP/ΔQ>3.36mmHg/mLはそれぞれ,感度94%・特異度73%,感度83%・特異度84%でエンドポイントを予測し,AUCは0.849と0.878であった.これらのカットオフ値を用いて2群に分けた各群のカプランマイヤー曲線の比較を図に示す.
【結語】
Ex-mPAP>26 mmHgとΔmPAP/ΔQ>3.36mmHg/mLは,いずれも将来の顕性肺高血圧を予測することができた.6分間歩行負荷心エコー検査は,将来顕性化するであろうEIPHのスクリニーング法として優れた方法であると思われた.