Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器 3 重症心不全と僧帽弁逆流

(S262)

基本機序と弁輪形成術の効果

Fundamental mechanism and effects of surgical annuloplasty

尾辻 豊

Yutaka OTSUJI

産業医科大学第2内科学

Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environemtal Health

キーワード :

重症心不全(左室機能低下)では,多くの場合僧帽弁逆流(MR)が出現する.左室拡大からの二次性MRである.虚血性MR・機能性MRと呼ばれることもある.虚血性MRは症例の予後を悪化させる独立した因子である.この機序は長らく乳頭筋機能低下や弁輪拡大と考えられていたが,左室拡大により乳頭筋が外側へ変位し,この乳頭筋が僧帽弁尖を異常に強く牽引(テザリング)し,弁尖の可動性や閉鎖を阻害すること主な原因であると判明した.
機序解明に関しては一区切りついていると考えられるが,問題は治療である.弁尖の機械的な機能不全であるために内科的な治療は限界がある.外科的治療で最も用いられているのが弁輪形成(縮小)術である.しかしながら,「弁輪拡大が主な原因ではない」ので弁輪形成(縮小)術には限界がある.予想されることではあるが,1)弁輪が小さくなってもMRが再発・残存しうる,2)弁輪形成により機能性僧帽弁狭窄が出現する,3)弁輪形成術の有無により予後に差がない,等が徐々に判明してきた.左室形成(容量縮小)術も試されたが(STICH trial),効果は明らかでなかった.STICH trialの左室形成術は前壁中隔から心尖部にかけての左室容量を減少させる手技がメインであり,虚血性MRの基本機序(テザリング)に対応した治療ではなかった.そのため,弁下部テザリングを減弱する手術が試みられ,著効例も散見されるが,まとまった報告がなく,手技が困難で,広く用いられているとは言いがたい.
このようにな虚血性MRに関しては機序はほぼ判明したが,治療に決め手がない状況が継続している.