Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器 2 虚血性心疾患の診断における心エコー図法の役割と進歩

(S259)

冠動脈バイパス術時に虚血性僧帽弁逆流を同時手術すべきかどうか?

Should Concomitant Mitral Valve Surgery Be Performed with Coronary Artery Bypass Grafting in Patients with Ischemic Mitral Regurgitation?

阿部 幸雄

Yukio ABE

大阪市立総合医療センター循環器内科

Department of Cardiology, Osaka City General Hospital

キーワード :

【緒言】
虚血性僧帽弁逆流(IMR)を伴う虚血性心疾患患者の予後は,IMRが高度であればもちろん,中等度あるいは軽度であっても不良であることが報告されている.そのことが,冠動脈バイパス術(CABG)の施行時にIMRがあれば同時手術をすべきであるとする根拠になっている.しかし,全てのIMRに対して同時手術をすればよいというわけではない.ACC/AHAガイドラインでは,CABGの施行時に高度のIMRがあれば僧帽弁同時手術がクラスⅡaの適応とされている.一方,IMRが中等度以下の際に僧帽弁同時手術が必要かどうかについては議論の分かれるところであり,同ガイドラインではクラスⅡbの適応とされている.しかし,どの時点の重症度をもって手術適応を判断すべきか等,解決されていない点も多い.
【我々の研究】
左室収縮不全を伴う患者にCABGを行うと,虚血から解除されたviabilityを伴う部位の収縮能が改善し,連鎖的にIMRの機序であるtethering-tentingひいてはIMRが改善する可能性がある.また,低用量ドブタミン負荷心エコー図検査(low-dose dobutamine stress echocardiography,LDSE)は,CABG前にviabilityを伴う部位の収縮能を引き出すことでCABG後の収縮能改善を予測することができる検査である.したがって,LDSE時のIMRの改善によって,CABG後のIMRの改善を予測することができるかもしれない.そこで我々はまず,中等度以上のIMRを有する冠動脈疾患15例(左室駆出率<50%,僧帽弁逆流率>30%)にLDSEを行った.LDSEによって僧帽弁逆流率は有意に減少した(44±12%から35±13%,P<0.01).LDSEによるIMRの改善は,LDSEによる後乳頭筋周囲の左室分画の壁運動改善(R=0.53,P=0.04),後乳頭筋側のtethering長改善(R=0.62,P=0.01),僧帽弁尖のtenting height改善(R=0.68,P=0.006)とそれぞれ関係していた.本研究から,乳頭筋,特に後乳頭筋が付着する部位の左室壁運動異常が改善すれば,tethering-tentingも改善してIMRが減少することがわかった.この研究の結果にしたがい,LDSEで軽度以下に改善する中等度のIMRに対する同時手術は不要であるとの更なる仮説をたてることができた.ただしこの仮説についてはまだ証明されていない.
【まとめ】
CABGの際に合併するIMRに対して同時手術が必要かどうかをどう判断すべきか,そして,その判断においてどう心エコー図検査を役立てるか,これらについて実例とともに提示したい.