Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 循環器
シンポジウム 循環器 1 左房評価を心房細動の臨床に活かす

(S255)

塞栓症リスク:左房/左心耳評価から塞栓リスクが評価できるか

Risk stratification for cardiogenic embolism by evaluation of left atrium and left atrial appendage

山本 昌良, 瀬尾 由広, 町野 智子, 石津 智子, 青沼 和隆

Masayoshi YAMAMOTO, Yoshihiro SEO, Tomoko MACHINO, Tomoko ISHIZU, Kazutaka AONUMA

筑波大学循環器内科

Cardiovascular Division, University of Tsukuba

キーワード :

厚生省からの統計によると現在,心房細動患者は日本で約100万人いるとされ,社会の高齢化により今後もその数は増加すると予想されている.心房細動における最大の合併症は心原性脳塞栓症であるが,その原因となる血栓の大部分が左心耳内に形成される.近年では新規経口抗凝固薬が普及し,デバイスによる左心耳閉鎖デバイスの導入が本邦でも予定されており,心原性脳塞栓症に対する治療は大きな変わり目を迎えている.
左心耳に注目してみるとその形態は単純な筒状のものから,多くの分葉構造をもつものまで多種多様であることに気付く.剖検症例を対象とした検討では,左心耳の形態は20歳代に成熟し,平均で2.1個の分葉数を持つと報告されている.左心耳の形態を解析した報告は主にCT(Computed Tomography)を用いたものが多いが,CTには被爆や造影剤の使用といった問題点がある.そこで我々は,三次元経食道エコー図を用いて左心耳を立体構築し,その構造を詳細に観察できることを報告した.経食道心エコー図検査は心房細動症例において左心耳内血栓の除外目的で日常診療の中で行われる検査であり,その際に左心耳の形態を評価できることは大きな利点である.
心房細動症例における心原性脳塞栓症のリスク評価の指標として,本邦および海外のガイドラインではCHADS2スコアもしくはCHA2DS2-VAScスコアが簡便かつ有用な指標として推奨されている.カテーテルアブレーションの術前症例を対象とした我々の検討ではCHADS2スコア,左房容積係数,左室駆出率,もやもやエコー強度といったこれまで報告されている指標と同様に,左心耳分葉数が左心耳内血栓の有意なリスク指標であった.また,左心耳の分葉数が多いほど,左心耳内血流速度が低下し,血栓の形成に必要である血流鬱滞が左心耳内に強く生じるということが分かった.左心耳の形態が先天的特徴であるとすれば,それは生まれつきの血栓症のリスク因子の一つと考えられる.
また,我々は,経胸壁心エコー図で求めた左房容積と左室駆出分画,血液検査でのBNP値の3つのパラメータから左心耳内血栓を予測する簡便なスコアリング法を考案し,特に低CHADS2スコア症例(1点以下)において左心耳内血栓の除外に有用な方法として報告している.
現行のガイドラインでは心房細動症例においてCHADS2スコアが2点以上であれば基本的には抗凝固療法が推奨されている.しかし,抗凝固療法が必須ではない低CHADS2スコア症例やアブレーション治療や薬物治療によって洞調律が維持されている症例においては抗凝固療法の適応や中止の判断に悩むことも多い.そのような症例において左心耳形態,左房容積,左室駆出分画等の心エコー図所見がその判断に付加的役割を果たすと考えられる.