Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
パネルディスカッション 基礎 高速撮像技術の拓く超音波イメージングの未来

(S244)

音響放射力を用いた剪断波の高速イメージング

High frame rate imaging of shear wave using acoustic radiation force

椎名 毅

Tsuyoshi SHIINA

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

Human Health Sciences, Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

組織の硬さを画像化する超音波エラストグラフィの手法の1つである,shear wave elastographyは,音響放射力を用いて,体内に剪断波(shear wave)を生じさせ,その伝搬速度分布から弾性率を得て,数値で比較できるのが利点で,近年,臨床でも広く使われ始めている.
通常,shear wave elastographyでは,音響放射力を生じさせるpushビームと直交する方位方向に伝搬する成分の音速をtime-of-flight法を用いて求める.すなわち方位方向に離れた2点間で組織変位の時間変化を比較し,波の伝搬時間を波形の相関等で求めている.
生体組織における剪断波の音速は,縦波に比べ2桁以上,低速であるが,仮に速度5m/sとした場合,フレームレート100fpsではフレーム間で5cm移動してしまうため,1mmの空間分解能を得るには,少なくとも5kHzの高フレームレートが要求される.
一方で,剪断波の音速は1〜10m/sと組織による違いが大きいため,屈折や反射などの波動現象が強く表れる.特に,悪性腫瘍では周囲組織に比較し,硬くなることから音速の変化する部位であり,また腫瘤内部も不均一な構造や性状を持つことが多いため,屈折や反射による波動現象が強く現れる可能性が高い.
上記のような課題に対応するため,我々は剪断波の特定方向の伝搬を仮定せずに,アーチファクトが生じにくい剪断波速度の推定法を検討している.即ち,逆フィルタやTime Reversalの手法を用いることで,計算機上で剪断波の任意の点で仮想的に集束させることができる.その集束波形の半値幅は,剪断波の波長と関連するので,これから速度を推定できる.
図は,多点励振と逆フィルタを用いて腫瘍ファントムを計測した結果であり,TOF法に比較し,提案手法では,硬い内包物の形状がより正確に描出されている.現在のShear wave imaging法は,原理的には,定量的であるとして臨床でも利用されているが,実際には剪断波の複雑な伝搬によりアーチファクトを生じ,また,粘性などの影響を受けやすい.今後,より進んだ画像再構成法が開発され,shear wave elastographyが真にて定量的なものとなることを期待したい.