英文誌(2004-)
特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 3 超音波治療の臨床応用最前線
(S240)
本能性振戦に対する経頭蓋MRgFUS
MR guided focused ultrasound treatment for essential tremor
平 孝臣
Takaomi TAIRA
東京女子医科大学脳神経外科
Department of Neurosurgery, Tokyo Women’s Medical University
キーワード :
超音波を頭蓋外から照射し脳内に収束させて臨床効果を得る治療(MR guided focused ultrasound treatment, MRgFU)は現在世界で26施設,本邦では5施設に設置されている.CTから得られた頭蓋骨の性状を加味することで,超音波の屈折や反射などを補正して脳内に直径数ミリ程度の熱凝固巣(図)を正確に作成可能である.現在本邦で対象としている疾患は本態性振戦(ET)という手のふるえに対してである.ETは患者のQOLを大きく妨げるが,視床Vim核を手術的に高周波熱凝固することでふるえを止めることができることが古くから知られている.またETはふるえ以外の症状がなく,均一な疾患で評価もしやすい.これまでの国際共同ランダム化比較盲検試験,国内臨床研究の結果,MRgFUはETの治療として,安全かつ有効で,有害事象が少ないことが示されている.局所ジトニアという疾患に対するMRgFUによる視床Vo核凝固の臨床研究がIRBで承認され本年から治療を開始する.今後,パ−キンソン病,難治性強迫性障害,脳腫瘍などの分野への応用も期待されている.MRgFUは医工学の進歩による低侵襲な機能神経外科治療として,今後さらに適応の拡大が期待できる.