Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 3 超音波治療の臨床応用最前線

(S239)

切除不能膵癌に対する強力集束超音波(HIFU)療法

High-Intensity Focused Ultrasound(HIFU)therapy for unresectable pancreatic cancer

祖父尼 淳, 森安 史典, 糸井 隆夫

Atsushi SOFUNI, Fuminori MORIYASU, Takao ITOI

東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野

Gastroenterology and Hematology, Tokyo Medical University

キーワード :

【背景】
膵癌は画像診断の進歩にもかかわらず,いまだ約60%が切除不能として発見される予後不良の癌である.切除不能進行膵癌の治療法として化学療法や放射線化学療法が原則的におこなわれているが,満足しうる成果が得られていないのが現状である.このような状況下で抗腫瘍効果および疼痛緩和効果を目的とした低侵襲治療法として注目されているのが,強力集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound; HIFU)療法である.HIFU療法は治療装置に取り付けられた多数の超音波発信源から腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う低侵襲の治療法である.
【目的】
切除不能膵癌患者に対しHIFU治療をおこない,その治療効果と臨床的認容性について検討した.
【方法】
非無作為抽出,非連続登録前向き単施設研究にて,2008年12月より切除不能膵癌に対し全身化学療法に加えた局所療法としてHIFU治療をおこなった.症例は切除不能膵癌90例(Stage IVa 54例,IVb 36例).HIFU装置はFEP-BY02(Yuande Bio-Medical Engineering, Beijing, China).Stage IVaとIVbにおける治療効果を比較検討するとともに有害事象の有無を確認し臨床的認容性を評価した.当院倫理委員会の承認を受け,東京医大がん研究事業団の研究助成を得ておこなわれている.
【結果】
有害事象は膵仮性嚢胞2例,膵炎1例,胃潰瘍1例,皮膚熱傷1例の5.6%の頻度で重篤なものは認めなかった.IVaとIVb群の比較では平均治療回数2.6 vs 2.4回,平均治療時間2.2 vs 1.8時間,平均発射回数:2595 vs 1962発で両群間に有意差は認めなかった.完全腫瘍焼灼率87.0 vs 75.0%,疼痛緩和効果80.0 vs 68.2%,原発巣の治療効果はCR:0,PR:7,SD:38,PD:9 vs CR:0,PR:4,SD:18,PD:14,病勢制御率は83.3%vs 61.1%であった.診断後からのMSTは32.6 vs 16.1ヶ月(p<0.01,p=0.002)と有意にIVa群で予後の延長が得られた.また化学療法+HIFU治療併用例90例と化学療法38例における診断後からのMSTの比較では26.7 vs 12.2ヶ月(p<0.001)と有意に併用例で予後の延長が得られた.
【結語】
HIFU治療は切除不能膵癌に対し新たな低侵襲治療のひとつとなりうる可能性が示唆された.