Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 3 超音波治療の臨床応用最前線

(S238)

前立腺癌に対するHIFU治療

High-intensity focused ultrasound for localized prostate cancer

小路 直1, 2, 夏山 雄揮1, 2, 小川 貴博1, 2, 川上 正能1, 2, 中野 まゆら1, 2, 寺地 敏郎2, 内田 豊昭1, 2

Sunao SHOJI1, 2, Yuki NATSUYAMA1, 2, Takahiro OGAWA1, 2, Masayoshi KAWAKAMI1, 2, Mayura NAKANO1, 2, Toshiro TERACHI2, Toyoaki UCHIDA1, 2

1東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科, 2東海大学医学部外科学系泌尿器科学

1Department of Urology, Tokai University Hachioji Hospital, 2Department of Urology, Tokai University School of Medicine

キーワード :

PSA検診の普及により前立腺癌の患者数が増加している.厚生労働省研究班の予測では,2020-2025年に前立腺癌罹患数は,第1位になると予想されている.それに伴い,低侵襲治療の必要性が高まり,前立腺癌に対する高密度焦点式超音波療法(high intensity focused ultrasound; HIFU)は注目されている.
前立腺癌に対するHIFUの特徴は,①非観血的,②何回でも繰り返し治療することが可能,③手術療法や放射線療法など他の治療法後に局所再発が認められた場合でも治療可能で,逆に,④HIFU療法後に根治的前立腺全摘術や放射線療法が可能である,さらに,⑤外来治療が可能,⑥合併症が少ない,⑦医療ランニングコストが安いなどが挙げられ,これらは,前立腺を摘出する外科的切除や,放射線治療よりも優れている点であると考えられる.
これまでの治療成績として,HIFUにより前立腺全体を治療する“whole gland therapy”後の5年生化学的非再発生存率は,低リスク群で84-86%,中リスク群で64-78%,高リスク群で45-68%,8年生化学的非再発生存率は,低リスク群で76%,中リスク群で63%,高リスク群で57%であり,前立腺癌特異的生存率は,98.7%-100%と報告されている.最近では,前立腺癌局在診断技術の発展により,HIFUは,正常組織を温存して,癌病巣のみを局所的に治療するfocal therapyの治療法の一つとしても注目されている.この治療成績として,focal therapyから一年後に施行された効果判定のための前立腺生検では,癌陰性率が76.5-91%で,術後2年間での非再発率は,低リスク群で83.3%,中リスク群で53.6%,術後5年間での非再発率は90%,術後10年間の非再発率は38%と報告された.合併症は,治療後の膀胱外閉塞による排尿障害,および術後勃起障害は,whole gland therapy後で,それぞれ6.5-41.1%および22.1-43.2%に認められ,focal therapy後で,それぞれ0-5.0%および5.0-6.0%と報告された.また,最も重篤な合併症である尿道直腸瘻は,whole gland therapyでは,0-0.9%に認められたが,focal therapyでは認められなかった.
HIFUによる前立腺癌治療は,その治療法としての特徴,低侵襲性から,whole gland therapyからfocal therapyへと役割を広げている.前立腺癌に対するfocal therapyは,癌治療とQOLの保持を目的とする治療法として位置づけられ,新しい治療選択肢として期待されており,今後,多症例の長期成績を集積することが望まれている.