Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 3 超音波治療の臨床応用最前線

(S238)

HIFUによる胎児治療

HIFU for Fetal therapy

市塚 清健1, 瀬尾 晃平2, 青木 弘子3, 松岡 隆2, 長谷川 潤一4, 石川 哲也2, 岡井 崇5, 吉澤 晋6, 梅村 晋一郎6

Kiyotake ICHIZUKA1, Kouhei SEO2, Hiroko AOKI3, Ryu MATSUOKA2, Jyunichi HASEGAWA4, Tetsuya ISHIKAWA2, Takashi OKAI5, Shin YOSHIZAWA6, Shinichirou UMEMURA6

1昭和大学横浜市北部病院産婦人科, 2昭和大学産婦人科学講座, 3水戸赤十字病院産婦人科, 4聖マリアンナ医科大学産婦人科学教室, 5愛育病院産婦人科, 6東北大学大学院工学研究科通信工学専攻

1Obstetrics and Gynecology, Showa University Northern Yokohama Hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Showa University, 3Obstetrics and Gynecology, Mito Red Cross Hospital, 4Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University, 5Obstetrics and Gynecology, Aiiku Hospital, 6Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

胎児治療は母体に侵襲を与え,また子宮筋への侵襲が早産という致命的な副作用を引き起こす可能性を有するために,実地臨床での普及が著しく遅れて来た経緯がある.超音波治療は胎児治療のこの難点を一挙に解決する治療法となり得る可能性がある.超音波治療の最大のメリットであり従来の全ての治療法と異なる独創的なところは子宮腔内へ医療機器を挿入する必要がないことである.母体及び子宮・胎盤に全く侵襲を加えない超音波エネルギーを用いた胎児治療法としてHIFUを応用する方法を考案しTwin reversed arterial perfusion(TRAP)sequenceの症例に対して臨床応用してきた.本シンポジウムでは①胎児治療におけるHIFUの治療戦略,②これまで行ったTRAP sequenceの胎児治療症例の提示,③その他応用可能な胎児治療に向けた基礎的研究についても発表する.①HIFUの治療戦略;HIFUを用いて血流遮断を行うことによる胎児治療と組織焼灼による胎児治療の二つの戦略が想定できる.前者の好対象はTRAP sequenceである.無心胎児と健康胎児(ポンプ児)の双胎間に存在する吻合血管により無心胎児が健康胎児より血流を供給されるため健康胎児は高拍出性心不全に陥る予後不良の1絨毛膜双胎児にみられる疾患である.HIFUを用いて無心胎児へ流入する血流を遮断することで治療が成立する.現行の治療はラジオ波を用いて同血流を遮断している.後者の治療対象として想定される疾患としては胎児胸水や腹水,胎児水腎症などの腔水症に対してHIFUを用いて組織焼灼し,瘻孔を作成し異常貯留水を羊水腔へ流出することで治療とする.現在は羊水腔へのシャント術が行われている.いずれも前述のごとく羊水腔へ医療器具の挿入が必須であり破水早産のリスクを伴う.②TRAP sequenceへの臨床応用;これまで6症例のTRAP sequence症例に対してHIFU治療を行ってきた.最初の4症例では定常照射波を用いて,後の2症例はトリガー照射波を用いて治療を行った.症例1は妊娠26週でHIFU照射を行った.血流の減弱は得られたものの血流遮断には至らなかった.症例2は妊娠14週に血流遮断に成功したが妊娠15週にポンプ児の胎児死亡が確認された.死亡胎児には臍帯の過捻転による臍輪部の絞扼がみられた.症例3は妊娠15週に血流遮断に成功したが妊娠16週にポンプ児の胎児死亡が確認された.死亡胎児には照射前から心嚢液の貯留および心筋の肥厚が見られていた.症例4は妊娠17週に血流遮断に成功し,妊娠37週で生児を得た.症例5は妊娠14週にHIFU照射を行い,血流の減弱は得られたものの血流遮断には至らなかった.症例6は妊娠14週にHIFU照射を行い,血流遮断に成功したが翌日に血流の再疎通がみられた.症例5,6はいずれも追加治療としてラジオ波照射を行い血流遮断に至り生児を得た.③胎児性尿道閉鎖は高度水腎症により無治療では腎機能が廃絶する予後不良の疾患である.現行では羊水腔シャント術などが行われている.シャント術に代わるものとしてHIFUを用いて腹壁に瘻孔を作成することを想定し動物実験を行った.巨大膀胱の新生仔兎モデルを作成し,HIFU照射は脱気水で満たされた水槽内で行い,巨大膀胱により膨隆した下腹部にHIFUを照射した.照射した瘻孔部位は組織学的検討を行なった.5500W/cm2の超音波強度においてHIFU照射後60秒以内に膀胱皮膚瘻が下腹部に形成され,瘻孔から尿が噴出するのを確認した.組織学的検討では瘻孔周囲の組織には損傷は認められなかった.脱気水で満たされた水槽内での動物実験モデルではあるが,HIFU照射により母獣の腹壁,子宮に侵襲を与えることなく非観血的手技により胎児人工瘻孔を形成できる可能性が示唆された.