Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 2 機器及び安全に関する最近の研究成果

(S236)

超音波検査者が健康で安全・快適に働く環境整備のための今後の課題

Issues in the work environment, safety and health of sonographers

鈴木 一弥1, 鈴木 浩之2, 茂木 伸之1, 関根 智紀3, 谷口 信行4

Kazuya SUZUKI1, Hiroyuki SUZUKI2, Nobuyuki MOTEGI1, Tomoki SEKINE3, Nobuyuki TANIGUCHI4

1公益財団法人大原記念労働科学研究所研究部, 2日立アロカメディカル株式会社技術統括本部デザイン室, 3国保旭中央病院中央検査科, 4自治医科大学臨床検査医学

1Research Division, The Ohara Memorial Institute for Science of Labour, 2Engineering Operation Division Design Office, Hitachi Aloka Medical, Ltd, 3Department of Laboratory, Asahi General Hospital, 4Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University

キーワード :

1)はじめに:諸分野の協力による検査者の障害予防
これまでの調査により,超音波検査者の作業姿勢に筋骨格系障害のリスクがあること,眼への強い負担の訴えが多いことが明らかにされてきた.ニーズの高い超音波検査の円滑な活用とさらなる普及を進めるためにも,検査者が障害のリスクの無い条件で活躍できるための整備を進めることが重要である.まず,超音波検査の人間工学的改善を進めて姿勢を改善することが必要である.そのためには,検査者,検査を行う施設,機器のメーカーや学術研究が協力し,現状認識を共有し,改善の取り組みを進めることが重要である.
2)検査者の参加とグッド・プラクティス情報の共有
超音波検査者には,自分たちの仕事に筋骨格系障害のリスクがあることを理解し,検査方法の改善を意識すること,検査環境や機器の改善に積極的に参加することが望まれる.比較的簡便で安価な補助的な機材の改善・工夫や既存の機材のレイアウト等の改善にも目を向け,グッド・プラクティスの情報の収集と施設をこえた共有がなされることが望まれる.無理な姿勢による障害は長期間の繰り返しによって発生し,加齢の影響も加わって増悪するものなので,若い検査者にこそ不自然な姿勢のリスクの長期的影響を理解して改善に参加してもらうことが重要である.
3)施設の体制と工夫
検査を行う施設には障害のリスクのない検査環境や条件を整備し,安全な検査方法を教育・啓発できる体制を整備することが望まれる.検査者の負担を考慮した検査室環境のデザインとレイアウトを採用し,障害防止ができる人間工学的デザインがなされた診断装置を選択することが望まれる.施設ごとの検査室環境や仕事の内容と使用する機器とのマッチングが最終的な人間工学的条件となる.障害のリスクのある特有の姿勢でなされる検査であることを考慮し,検査を受ける人と検査者の双方の安全と負担軽減に考慮した椅子や検査台などの選択・配慮をすることが強く望まれる.ここでも,複数の施設におけるグッドプラクティスの情報の収集と共有が望まれる.作業に関連する障害が発生した検査者に対する負担軽減などの対応が適切になされる体制の整備も必要である.
4)システム一体デザイン
超音波診断装置および関連する機器を開発するメーカーには診断装置や併用される機材の人間工学的改善をさらに進めることが望まれる.ありあわせとも思われる検査台や椅子などが使用されることも多い現状であるが,超音波検査の現状の姿勢の不自然さからすれば,本来は専用の検査代などの使用が常識となるべきと考える.超音波検査に適した周辺の機材の開発・提案と普及が望まれる.診断装置,受診者,検査者の3者のレイアウトを最適化できる全体的システムの開発・提案も望まれる.また,暗い画像に対して精密な視認を繰り返す超音波検査室の照明の条件は重要であり,照度の調節とグレア対策は必須である.超音波検査のために最適化された検査室環境をも含めたシステムの開発・提案と普及の推進が望まれる.