Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 基礎
シンポジウム 基礎 2 機器及び安全に関する最近の研究成果

(S235)

音響放射力インパルス(ARFI)を伴う超音波と期外収縮

Ultrasound with Acoustic Radiation Force Impulse(ARFI)and cardiac premature complex

石黒 保直1, 新田 尚隆2, 赤井 一輝3, 高野 わかな3, 高山 法也4, 小形 幸代5, 笹沼 英紀1, 安田 是和6, 谷口 信行4, 秋山 いわき3

Yasunao ISHIGURO1, Naotaka NITTA2, Kazuki AKAI3, Wakana TAKANO3, Noriya TAKAYAMA4, Yukiyo OGATA5, Hideki SASANUMA1, Yoshikazu YASUDA6, Nobuyuki TANIGUCHI4, Iwaki AKIYAMA3

1自治医科大学消化器・一般外科, 2産業技術総合研究所健康工学研究部門セラノスティックデバイス研究グループ, 3同志社大学生命医科学部医情報学科, 4自治医科大学臨床検査医学, 5自治医科大学循環器内科, 6芳賀赤十字病院外科

1Department of Surgery, Jichi Medical University, 2Health Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology(AIST), 3Medical Ultrasound Research Center, Doshisha University, 4Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University, 5Division of Cardiovascular Medicine, Department of Medicine, Jichi Medical University, 6Department of Surgery, Haga Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
音響放射力インパルス(ARFI : Acoustic Radiation Force Impulse)を伴う超音波は,エラストグラフィーの1手法として,すでに臨床応用されている.ARFIを伴う超音波は,集束超音波であるため通常より超音波の強度が強い.また,超音波造影剤と併用することにより超音波の生体影響への閾値が低下し,物理的もしくは温度上昇による組織損傷が引き起こされる可能性がある.心臓(心筋)においても硬さは有用な臨床情報であり,血流評価の目的で超音波造影剤が併用されることもありうる.超音波造影剤存在下でのARFIを伴う超音波が心臓におよぼす生体影響としての期外収縮に着目し動物実験を行った.
【方法】
ウサギ(日本白色,オス,3kg)を用いて実験を行った.全身麻酔下に仰臥位とし,前胸部の体毛を除去した.両側の前胸部皮下に刺入した針を電極として心電図を記録した.超音波診断装置で心臓が描出される肋間を確認し,ARFIを伴う超音波照射用の振動子を,超音波ゼリーを介して胸壁に密着させた.超音波照射は最も外的刺激に感受性があるといわれる受攻期に行った.照射の条件は,Mechanical Index(MI):1.8・4.0,照射時間:0.3・10 msecとした.超音波造影剤は,ソナゾイド®TM(ペルフルブタン)を用いた.造影剤投与なし,0.8μl MBの単回静注,1.6μl MBの持続点滴(30分)についてそれぞれ照射を行った.一部の実験では大腿動脈にカニュレーションし,動脈圧の測定を行った.
【結果】
左心室を目標として行った実験では,ARFIを伴う超音波照射用振動子の焦点は心腔内に位置した.MI=4.0,PD=10 msecの実験では,超音波造影剤投与時のみ期外収縮が誘発され,単回静注よりも持続点滴で頻度が高かった(単回静注:16.0%,持続点滴:70.0%).期外収縮の一部には動脈圧の変化も伴っていた.同じく左心室を目標としてMI=1.8,PD=0.3 msecとした実験でも超音波造影剤の持続点滴時のみ(25%)で期外収縮の誘発を認めた.1回を除いてすべて幅の狭いQRS波形であった.いずれの実験でも超音波照射から期外収縮のQRS波形までの時間は80-125 msecであり,超音波照射のおきたタイミングが受攻期か否かよっても期外収縮の頻度に差はなかった.致死的な不整脈は観察されなかった.目標を心房に変更しての実験では,MI=1.8,PD=0.3 msecでの単回静注でも期外収縮が観察され,MI=1.8,PD=10 msecでも単回静注で心室を目標としたときよりも高頻度に期外収縮を認めた.
【考察】
単回静注よりも持続点滴で頻度が高い傾向であり,超音波造影剤の血中濃度が影響していると考えられた.また,超音波の焦点が心腔内であることから,キャビテーションにともなう刺激が心腔から心内膜直下の刺激伝導系を刺激して期外収縮を誘発させている可能性がある.心房を標的とした実験の結果から,刺激伝導系のなかでも被刺激性のより高い心房側が今回の誘発された期外収縮の起源となっていると思われる.実験手法に制限もあるため,期外収縮の発生機序については今後もより詳細に検討を重ねる必要がある.
【結語】
動物実験ではあるが,ARFIを伴う超音波と超音波造影剤の併用で期外収縮が発生することが確認された.生体での安全性が確認できるまでは,心臓に対してのARFIを伴う超音波検査と超音波造影剤との併用については慎重に対応すべきである.