Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
ワークショップ 領域横断 2 超音波診断の決めてとなるサインと病理組織における根拠

(S226)

後方エコー増強効果:Posterior echo enhancement

Posterior echo enhancement:A speculation on its causal mechanism

石田 秀明1, 小松田 智也2, 八木澤 仁2, 渡部 多佳子1, 榎本 克彦3, 大山 葉子4, 長沼 裕子5, 鈴木 克典6, 小川 眞広7, 長井 裕8

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATUDA2, Hitoshi YAGISAWA2, Takako WATANABE1, Katuhiko ENOMOTO3, Yoko OHYAMA4, Hiroko NAGANUMA5, Katunori SUZUKI6, Masahiro OGAWA7, Hiroshi NAGAI8

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院消化器科, 3秋田赤十字病院病理診断科, 4秋田厚生医療センター臨床検査科, 5市立横手病院消化器科, 6山形県立中央病院消化器科, 7日本大学病院消化器肝臓内科, 8NGI研究所

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital, 4Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 5Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 6Department of Gastroenterology, Yamagata Prefectural Central Hospital, 7Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, 8New Generation Imaging Laboratory

キーワード :

【はじめに】
病変後方が同じ高さの周囲組織に比してエコー輝度が低いものを“後方エコーの減衰”,その逆のエコー輝度が高いものは“後方エコーの増強”と呼ばれ病変の性状診断の一助として利用されている.後方エコー増強効果の発生機序としては,a)病変内部の超音波の減衰が周囲肝より軽微である,b)病変内部の超音波伝搬速度が周囲肝より遅く(病変が球形の場合)超音波が病変後方に収束する,などが挙げられ,その代表例として常に肝嚢胞が取り上げられる.肝嚢胞は,1)内部が液体で充満しており,2)球形をしている,など,の理由で直感的に理解しやすい病変であるが,病変が充実性である場合に関しては,未だ十分に解明されていない.充実性病変と後方エコー増強効果との関連の解明がなかなか進まない理由として,イ)後方エコー増強効果が明瞭な症例で手術され病変全体が組織学的に詳細に検討されるケースは多くはない,ロ)実際の症例の多くは,病変後方の状態が複雑で,増強,減衰,不変,という部分が混在するためである.そのため,充実性病変にみられる後方エコー増強効果の機序に関し一歩前進するには,ほぼ均一な後方エコー増強効果を示す充実性病変の切除標本を病理学的に丹念に検討する必要がある.今回それに合致する症例が4例あった.2例がdesmoid tumor,膵NET(神経内分泌腫瘍)で,病変は均一低エコーで,病理像は,ともに,間質の発達がほとんどなく,数ミクロンの腫瘍細胞が密に充満していた.このことは,逆に,腫瘍細胞が密に配列し病変が腫瘍細胞で占められている場合は基本的にエコーレベルは低く,超音波の減衰は小さい(そのため後方エコーが増強する)と推定される.
【考察】
Bモード画像は音源から放射された超音波が生体組織を伝播した時生じる組織内の各点の反射強度の差を輝度の差としてマッピングしたもので,現在の超音波診断装置は,a)超音波伝播速度は生体内で一定(1530−1540m/秒)で,b)伝播により生ずる減衰も均等で,さらに,c)生体内で超音波は常に直進し,d)放射された超音波(ビーム)は一本でそれは限りなく細い,という仮定から画像を作成している.実際には,この理想論的にまで単純化された仮定と現実の生体の複雑さの間にギャップがあり,後方エコー増強効果は上記のb)が仮定どおりいかない場合である.今回の腫瘍細胞が密に配列し病変が腫瘍細胞で占められている場合は基本的にエコーレベルは低く,超音波の減衰は小さく,そのため後方エコーが増強する,という視点で疾患の超音波像を見直すことは,超音波診断上意味のある行為と思われる.なお,生検のみであるが組織学的検索がなされた多数例の後方エコー増強充実性腫瘍(悪性リンパ腫,など)に関しても参考資料として提示する.