Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
ワークショップ 領域横断 1 この領域の超音波検査について聞きたい:眼科,皮膚科,運動器,呼吸器,神経など

(S221)

頭頸部領域の超音波診断

Ultrasonographic Diagnosis of the Head and Neck Region

古川 政樹1, 古川 まどか2

Masaki FURUKAWA1, Madoka FURUKAWA2

1横浜市立大学名誉教授, 2神奈川県立がんセンター頭頸部外科

1Professor Emeritus, Yokohama City University, 2Head and Neck Surgery, Kanagawa Cancer Center

キーワード :

頭頸部とは頭部および頸部のうち,脳外科領域,眼科領域を除いた部位で,解剖学的には甲状腺も含まれる.しかし,甲状腺については甲状腺以外の部位を対象とした超音波検査とはこれまでの流れが全く異なり,既に一つの専門領域として確立されている.本セッションで発表させていただく目的は,甲状腺を除いた頭頸部領域,なかでも頸部超音波診断の現状,課題をお示しすることにあり,以下,実際の症例を提示しながら述べることとする.
対象となる臓器は唾液腺(耳下腺,顎下腺など),リンパ節をはじめとして頸部全体に存在し,病態も炎症,腫瘍など多岐にわたるので,頸部超音波検査の重要性については論を待たないところであり,検査にあたっては頸部の複雑な解剖や関連する疾患の十分な理解が必須となる.しかし,現状では頸部全体を対象とした標準的な検査法や用語,ひいては診断基準に関して公式に定められたものがないということがまず問題となり,画像の表示方法や診断基準が早くから決められていた甲状腺や,近年になって標準的評価法が定められた頸動脈とは事情が異なることに留意する必要がある.
実際の検査においては問診,視診,触診の結果によらず,鎖骨上から耳下部まで,原則として軸位に直交する面で両側,つまり頸部全体を走査する.その際,異常所見の有無にかかわらず,甲状腺レベル,分岐部レベル,耳下腺レベルなどいつも決まった部位の画像を記録に残しておくと,以後の経過観察などに有用である.
孤立性腫瘤あるいは限局的腫脹性病変が発見された場合は,まず由来臓器が明確かそうでないかを判断する.耳下腺や顎下線由来であれば,炎症か腫瘍か,腫瘍の場合,良性か悪性かの鑑別を進める.由来臓器がはっきりしないときはリンパ節病変か,神経原性腫瘍か,その他の非上皮性病変かといった診断を念頭に検査するが,とくに重要なのはリンパ節転移や神経原性腫瘍である.ここで判断を誤ると悪性疾患を見逃すことにつながったり,良性疾患に放射線治療を行ってしまうという誤った方向性を出してしまうことになる.
由来臓器がはっきりしない多発性病変が発見された場合は,リンパ節病変の可能性が高くなるが,炎症か腫瘍(悪性リンパ腫,転移)かの見極めは慎重に行う.
いずれの場合も,良性,悪性の診断に迷った場合は,治療の時期を失しないよう,超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診を考慮する.
頸部領域の超音波検査は徐々に普及してきたとはいえ,未だ発展途上で課題が多く,今後は,頸部超音波検査方法の標準化,診断基準決定を押し進め,効率的な検査を行うための教育システム構築を関係方面と協力しながら検討する必要があると考える.