Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
ワークショップ 領域横断 1 この領域の超音波検査について聞きたい:眼科,皮膚科,運動器,呼吸器,神経など

(S220)

消化器外科周術期管理へのPoint-of-Care Ultrasonography導入

Introduction of Point-of-Care Ultrasonography in periopeative management of gastroenterological surgery

杉本 博行, 猪川 祥邦, 小寺 泰弘

Hiroyuki SUGIMOTO, Yoshikuni INOKAWA, Yasuhiro KODERA

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

Department of Gastroenterological Surgery, Nagoya University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
超音波検査は消化器外科領域における画像診断の中心とはいえない.しかし,術中の腫瘍の存在・進展度診断,血管解剖の把握には超音波検査は必須であり,また外科医が自ら術中に行うことができる唯一の診断法である.また術後合併症診断においてもベッドサイドですぐに行うことのできる超音波検査は有力な武器となる.当科では消化器外科周術期,特に肝切除周術期管理において超音波検査を積極的に施行してきた.近年ではpoint-of-care ultrasonography(以下POCUS)の概念が提唱されたが,評価対象を限定し周術期管理への有用性につき検討してきたので報告する.
【方法】
使用機種はGE社製,LOGIQ E9.対象は肝切除術後症例で,POCUS評価日は術前,術後1,3,5,7病日を基本とし,異常が検出された場合には適宜追加し施行した.評価対象部位は1)内頚静脈,2)肺,3)肝,4)腸管,5)体幹とした.
評価法
1)内頚静脈;形状,大きさ,呼吸性変動の有無により循環機能,体液量の評価とした.
2)肺;胸水,無気肺診断のほか,Bラインの有無個数により呼吸器合併症の評価とした.
3)肝;カラードプラによる門脈血流観察により腸管循環の評価とした.また,肝切除症例においては血管再建時の肝血流評価,血栓診断,さらに肝切離面貯留液診断および穿刺ドレナージに用いた.
4)腸管;腸管浮腫の有無,蠕動の有無,胃内容停滞の有無により腸管機能評価とした.
5)体幹;皮膚および皮下脂肪層のエコー輝度変化,水分貯留により浮腫の程度を分類し,術後侵襲度評価,体液量評価とした.
【結果】
1)内頸静脈USは簡便であり,臨床上脱水が疑われる症例では内頸静脈虚脱を認め,輸液負荷の指標となった.また肝切除時には内頸静脈カテーテルが留置されることが多いが,留置により血栓を形成する率が高く,カテーテル関連血栓を高率(61%)に認め,カテーテル抜去時期の再検討を必要とした.
2)肺;胸水貯留,無気肺の診断は容易であった.Bラインの認識も容易であったが,今回の対象症例では直接治療に影響する変化を認めた症例はなかった.しかし,人工呼吸管理が必要となる症例では多数の融合するBラインを認めた.
3)肝;門脈血栓症の早期診断に有用であった.
4)腸管;胃内容停滞,腸管拡張の評価は容易であり,食事摂取開始時期の決定に有用であった.
5)体幹;浮腫はグレード分類(第87回日本超音波医学会既報)により診断可能であり,術後侵襲評価,体液管理に有用であった.
【考察】
今回の検討ではhigh-end装置を用い評価項目の妥当性を検討したが,評価項目を限定したPOCUSは短時間で施行可能であり,消化器外科術後管理に有用な情報(呼吸・循環・代謝など)をその場で得ることが可能であった.消化器外科領域におけるPOCUSの普及のためにはより小型の装置での検討が必要であるとともに,超音波検査に習熟していない消化器外科医が評価可能な項目作成が重要と思われる.
【結語】
消化器外科周術期管理領域へのPOCUS導入は可能である.