Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断 4(JSUM・JABTS共同企画) 超音波検査環境に関する工夫・アイデア 女性の視点から・男性の視点から(JSUM男女共同参画委員会共同企画)

(S212)

超音波検査室の整備と問題点:当検査室における取り組みとスタッフの動向から

An important point to consider to improve the quality of ultrasound laboratory: from analysis of alteration trend in our laboratory stuff

紺野 啓

Kei KONNO

自治医科大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University School of Medicine

キーワード :

当検査室は,病床数1100の高次機能病院の中央診療部門である,臨床検査部の一部門で,常時8台の超音波診断装置が稼働している.院内各診療科からの依頼に応じて,17名の常勤スタッフ(医師3名,臨床検査技師14名)で,年間約15000例の超音波検査を行いながら,大学医学部の附属病院として,年間約20-30名の研修医と約10名の学生の研修にも当たっている.
当検査室ではハードウェア,ソフトウェアの整備に加え,関連する研究からも知見を得て,超音波検査の環境整備に取り組んできたが,今回はこれらについて紹介し,問題点について検討する.
1)労働衛生の改善
a)検査施行者の疲労・ストレス低減策
当院では,検査ブース8か所の照明は全て独立の調光式で,検査用スツールは全て,患者用ベッドも3ブースで高さ調節式として,検査施行者の疲労低減に努めている.
b)感染予防策
当教室の宮本らの報告により,リンパ節の吸引細胞診(FNAC)では,事前の把握が困難な結核性リンパ節炎例が一定の割合で存在することが明らかとなったため,当検査室では,リンパ節の細胞診は全例,採取検体のプレパラートへの吹付を簡易ドラフト内で行っている.現在はさらに詳細な実態を明らかにするための臨床研究が進行中である.
2)ハラスメント対策
当検査室では,一般的なソフトウェアによるセクシャルハラスメント対策のほか,ハードウェアによる対策として検査ブースの側壁上部が開放された構造を採用し,ブースの密室化を防いでいる.
3)検査スタッフの育成と確保
当検査室では,研修者と技師が行う検査については,超音波専門医・指導医によるダブルチェックが行われるが,超音波検査士である技師が行う検査は,作成されたレポートのチェックのみで終了としている.これらの業務を通じたトレーニングにより,検査室スタッフの医師は,最短時間での専門医および指導医取得を目指す.同様に技師は,最短時間での検査士取得を目指し,その後も可能な限り認定分野を増やすことを基本的目標としている.
過去10年間(2006年1月〜2015年12月)の当検査室スタッフの動向をみると,観察開始時,医師6名(うち指導医4名,専門医1名),技師8名(うち検査士6名)であったものが,終了時には医師4名(うち指導医3名,専門医1名),技師13名(うち検査士8名)へとスタッフの構成が大きく変化していた.
期間内の在籍医師はのべ9名(男性6名,女性3名)で,専門医新規取得者は3名(男性1名,女性2名),指導医新規取得者は1名(女性)であり,専門医新規取得者2名(男性1名,女性1名)は期間内に離職していた.また専門医未取得の離職者も1名(女性)みられた.一方,在籍技師はのべ18名(男性3名,女性15名)で,検査士新規取得者6名は全て女性であり,うち3名は期間内に離職し,1名は産休・育休を経て職場復帰を果していた.期間内の離職者(医師および技師)は計8名で,離職理由は,女性(5名)がすべて結婚・出産関連,男性(3名)がすべて転職であった.
検査スタッフの育成と確保は,検査室の運営と検査環境の維持・改善に欠かせないが,実際のスタッフの動向からは,有資格者育成が順調な半面,定着は難しい実態と,性別や職種によるキャリア形成の違いが浮き彫りにされた形で,特に女性スタッフに共通する結婚・出産に伴うキャリア継続の難しさが印象深い.今後は,キャリアの中断や所属の変更をまたいでのキャリア継続を実現するために,専門医および検査士のスキルやキャリアの標準化,中断後の復帰に向けたトレーニングの提供などの対応が必要となろう.