Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断 2 脳神経領域における超音波の使い方

(S205)

脳卒中診療における頸動脈エコーの活用法:総頸動脈・内頸動脈

Various roles of the carotid ultrasonography in the stroke case

濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, Kita-harima Medical Center

キーワード :

はじめに
血管エコーは全身血管を無侵襲に評価できる非常に有用な検査法である.脳卒中領域についても,現在では低侵襲,無侵襲な検査法であるCT,MRI,MRAに加えて,エコー検査が重要な役割を担っている.なかでも,頭蓋内外動脈狭窄や,塞栓源になりそうなプラークの存在は脳梗塞の主原因の一つである.これらの観察に頸動脈エコーを用いることで,危険性の評価と適切な治療方針を検討することができる.今回,脳卒中領域における頸動脈エコーの役割と可能性について総頸動脈,内頸動脈を中心に報告する.
1.脳梗塞の原因精査としてのエコー検査の役割
1)プラーク評価
プラークの性状を詳細に評価することで,脳梗塞発症における危険性の評価が可能になり,治療方針の決定に役立つ.プラーク評価のポイントとしては,プラーク厚,表面性状,内部性状,可動性などを観察する.特に注意したいのは,脳梗塞のリスクが高いプラークの存在である.要注意なプラークには,①低輝度プラーク,②潰瘍病変,③可動性プラーク(表面,内部,jellyfishタイプ),④fibrous capが薄いプラーク,⑤急速進行・変化する血栓,狭窄,などが挙げられる.これらのプラークを観察した場合は,性状評価を精密に行うことで,発症リスクの判断ができ,保存的治療を行った場合でも,定期的に観察することで性状の変化を確認することができる.
2)内頸動脈狭窄
内頸動脈狭窄の評価には,NASCET法,ECST法,短軸面積法,PSV(最大収縮期血流速度)などが主に用いられる.特に血流速度の計測は,石灰化病変により狭窄率が評価できない場合でも有効である.PSVが200cm/sec以上で70%以上の狭窄が考えられる.狭窄率を算出することで,内膜剥離術や頸動脈ステント留置術を用いるか,内科的治療を行うかを判断する指標の一つとして利用できる.周術期の観察にも注意が必要であり,術前にはプラーク性状,血管径,高位分岐の有無,遠位端の情報などを観察する.ステント留置後は,ステント内プラークの突出や可動性血栓の存在,ステント端の残存プラークなどにも注意が必要となる.最近では,頸動脈エコーを用いてエコーガイド下にステント留置を行うことも試みている.
2.脳卒中のリスク管理としての頸動脈エコー検査
1)IMT計測
日常診療の中で,動脈硬化の評価には頸動脈エコー検査がよく用いられる.特に,内中膜厚(intima-media thickness:IMT)は早期からの動脈硬化の指標とされ,脳卒中や心血管イベントとの関連や,薬剤に対する治療効果の判定など利便性が高い.ただし,手動での計測には誤差の要素が強いため,客観的にIMTを評価する方法としてtrace法が有用である.
3.異常血管の評価に頸動脈エコーを用いる
1)動脈解離:エコーで観察できる頸動脈解離には,総頸動脈,内頸動脈解離と頭蓋外椎骨動脈解離がある.総頸動脈,内頸動脈解離の場合は,大動脈から解離が波及していることが多い.真腔と偽腔の区別には,血流パターンの評価が有用である.
2)もやもや病:もやもや病は,頸動脈エコー上,「ボトルネックサイン」を認める.これは,内頸動脈起始部の拡張部から急に狭小化していることを観察する.
3)血管炎:高安動脈炎や巨細胞性動脈炎のような大血管炎は,頸動脈にも炎症が波及する.特に,総頸動脈のIMC(intima-media complex)全周性肥厚(macaroni sign)や浅側頭動脈の低輝度像(halo sign)などは血管炎の特徴的な所見といえる.脳梗塞の原因として血管炎も知っておく必要がある.
おわりに
頸動脈エコーを理解し,駆使することは脳梗塞診療において重要な意味を持つといえる.今回,実際の症例を提示しながら報告したい.