Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.966(2018年)→0.898(2019年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
パネルディスカッション 領域横断 1(一部英語) Point of care超音波検査

(S202)

消化器系のpoint-of-care超音波−超音波専門医の視点から

Point-of-care Ultrasound for Gastroenterological Diseases

畠 二郎

Jiro HATA

川崎医科大学検査診断学

Dept. of Endoscopy and Ultrasound, Kawasaki Medical School

キーワード :

(Point-of-care US)
基本的には医師が診療の一環としてベッドサイドで手軽に施行するUSのことを指すようである.画像診断を専門としない医師が使用することを前提としており,比較的容易に技術が習得できることも求められる.このことから分かるように,腹部疾患の診断においてPoint-of-care US(以下POCUS)は疾患の存在診断に関するスクリーニング的位置づけであると言えよう.さして適応も考えずに何でもCTという本邦の現状を鑑みれば,POCUSが注目されつつあるというのは望ましいことであろう.しかしながらこれには多少の問題があると考える.
(診断能をいかに担保するか)
原則として簡便な手技のみを採用する点で,一定の講習あるいはトレーニングにより検者依存性はかなり克服できると推測される.POCUSの手技と診断基準を標準化し,その手技を用いた場合の各疾患における診断能を明らかにするということが重要である.特に急性腹症で最も避けたいのは検査の偽陰性であり,高い確率の検査前診断を精度の低い検査で否定することがあってはならない.また,偽陰性を恐れるあまり,POCUSで異常のない症例のすべてにCTなどの検査を追加するようではPOCUSの存在意義が薄れてしまう.
(消化器系のPOCUS)
通常の腹部超音波検査では腹部全体が比較的時間をかけて観察されるという印象があるが,特に救急現場におけるPOCUSでは検査前診断の確認あるいは否定という要素が強い.
消化器系では代表的疾患として急性胆嚢炎の初期診断にPOCUSが用いられており,胆嚢腫大やMurphy signなど比較的分かりやすい所見による診断のため一般にその診断能は良好とされている.一方で腹痛を代表とする腹部症状を訴える症例の原因疾患が消化器とは限らず,腎泌尿器,産婦人科,血管系の疾患,さらには整形外科的疾患などの知識も必要であり,それらを手早く評価することが求められる.とすると結局腹部全体を観察することになってしまうため,疾患頻度や重要性などの視点から整理された一定の手順が推奨されても良いであろう.
(POCUSの位置づけ)
POCUSをトリアージの手段と考えるのであれば,POCUS陰性(つまり異常所見が無い)の場合には他の画像診断は施行しないのであろうか?またPOCUS陽性の場合には次の診断ステップは何であろうか?あまりその後の方針を変化させないのであれば時間,コストを考えれば施行しない方が良い検査ということになる.このあたりも本邦では一定のスタンダードがあるとは思えない.
(POCUS=確定診断法?)
これが理想であり,我々の施設ではICUや救急室にハイエンド機を持ち込んで造影超音波などを駆使した診断を行っている.またストレッチャーで超音波センターに搬入することも日常茶飯事であるが,救急室から搬送する2,3分のために患者の生命予後が左右されたという経験はない.そう考えると迅速に救急対応が可能な超音波室があれば,POCUSをあえて行う必要もないかも知れない.今後「1st lineかつ精密な確定診断法であるUS」と「原則お手軽簡単であるべきPOCUS」両者の存在意義や位置づけについて議論されるべきであろう.