Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 Joint2(JSUM・AFSUMB Joint Session)(English) 3D超音波の臨床応用

(S198)

腟入口部からの3D超音波による女性骨盤底の観察─加齢と生殖のもたらす変化─

Examination of the female pelvic floor by 3-dimensional introital ultrasonography to highlight the changes arising from aging and reproduction

中田 真木

Maki NAKATA

三井記念病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Mitsui Memorial Hospital

キーワード :

【目的】
女性の経会陰超音波検査は,いきみやすぼめなどの動作を負荷して観察する動的超音波検査と,取り込んだボリュームデータから観察に適する断面を切り出して解析を行う3D超音波検査の2つの方向に展開されている.本報告の目的は,3D対応の経腟プローブによる静的な3D腟入口部超音波検査(以下,3D-IUS)の用途と有用性を探索することである.
【対象】
最近の1年間に骨盤底・下部尿路機能障害により当科に来診し,解析可能な3D-IUSのボリュームデータが残されている症例.
【方法】
3D-IUSデータは診療用の電子システムにより加工・閲覧した.それぞれのデータは,尿道,骨盤隔膜,会陰・肛門領域に区分し,矢状断と直交する断面を切り出して観察に用いた.輪郭または内部構造の左右差,もしくはあるべき構造の喪失を認めるときに《異常》と判定した.
【結果】
尿道のデータでは,断面の形状,恥骨尿道靭帯の様態,外膜-平滑筋間のhaloなどが観察できた.骨盤隔膜のデータでは,恥骨からの剥離(いわゆるavulsion injury),筋束の内部エコーもしくは輪郭の変容や一部欠損,恥骨肛門筋束の弛みなどが観察可能であった.骨盤隔膜のデータに認められる輪郭の変容や欠損は,多くの場合にMRIの所見とも一致した.一方,挙筋裂孔の拡大など明白な骨盤隔膜の機能低下があっても,3D-IUSでは必ずしも異常を検出できなかった.会陰・肛門のデータでは,内外括約筋の欠損や菲薄化の他,括約筋-挙筋の連結箇所や会陰腱中心などに,分娩時の損傷と見られる欠損,ギャップ,瘢痕化などが頻繁に見出された.
【結論】
細径のプローブを用いる3D-IUSは,1)診察と同時に簡便に行える,2)コンベックスプローブと比較して高画質で,プローブに近い肛門や会陰の描出にも優れる,3)左右差に基づく異常所見の拾い出しができる,などの強みがある.
骨盤底再建外科では,手術治療のクオリティコントロールのために3D-IUSはきわめて有用である.また,診療連携の効率化という観点で,産科,女性ヘルスケア,泌尿器科の各領域においても診察台上の3D-IUSは重要性が高い.