Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 1 専門医,検査士制度とその教育をみなおす

(S185)

検査士および指導検査士制度の現状と問題点

The current status and problems of systems for “Registered Medical Sonographer(RMS)”: and “Registered Senior Medical Sonographer(RSMS)”

森 秀明

Hideaki MORI

杏林大学医学部第三内科

The Third Department of Internal Medicine, Kyorin University School of Medicine

キーワード :

腹部超音波検査の問題点として術者が病変を見落とすと後で画像を読影しても正しい診断にたどり着くことはできない点が上げられる.現在,日常臨床の場で行われている超音波検査の多くは技師にゆだねられており,検査の信頼性を高めていくためには技師の超音波検査技術の向上が不可欠である.日本超音波医学会では超音波検査に携わる技師や看護師に対する認定制度として検査士認定試験と指導検査士(腹部領域)認定試験を毎年実施している.
超音波検査士認定試験では超音波検査実績として20例の抄録の提出が求められている.試験に合格するためには抄録の審査と筆記試験(基礎領域および臨床領域)がそれぞれ合格基準に達している必要がある.以前は抄録に不備があった場合は受験者に再提出を求め訂正されれば合格にしていたが,平成25年度からは書類の再提出がなくなったため,抄録の不備は減点対象になり合否に影響することになった.超音波検査士認定試験の問題点としては,知識を問う試験であり実技試験がないため試験に合格したからといって検査を行う技術を担保するわけではない点があげられる.超音波検査士の資格は5年ごとに更新する必要があり,本学会学術集会や関連学会等の出席や発表,論文発表の合計点数が25単位以上あれば更新可能であるが,単位が足りないため更新猶予や保留を申請する技師もみられる.更新に必要な点数である25点は検査士取得後の質の向上や資格を維持していくためには決して十分とはいえないが,技師は職場などで学会出席の制約があることも多く,また居住地によっては定期的に本学会学術集会や関連学会に出席するのが困難な場合もあるため現在のところ変更されていない.また平成27年11月から超音波検査士資格の保留制度の変更が行われた.今までは検査士更新時期に単位が足りない場合,海外留学,出産,介護などの特別の事情がある場合は資格更新保留申請ができたが,今後はこれらの保留条件が発生した時に申請を行うことになった.また保留期間中は検査士の呼称はできないこと,学会に出席しても単位の取得ができないことが主な変更点である.
一方,超音波検査士の上級に位置する認定制度として平成24年度から指導検査士認定試験が開始された.この制度は心エコー図学会の認定専門技師制度に準じて本学会で設立された認定制度である.心エコー図学会認定専門技師制度は本学会認定検査士制度の循環器または血管領域を取得した技師に対する上級の認定制度として位置付けられていることから,本学会の指導検査士制度は主に腹部領域(消化器領域・泌尿器科領域・産婦人科領域をあわせた領域)に対する認定目的で設立された.指導検査士認定試験は1次(書類審査),2次(筆記試験),3次(面接,実技)からなり,第1〜3回までは1次審査で不合格になると2次審査を受けられなかったが,第4回からは1および2次審査をあわせて合否を判定することに変更されたため,受験者は2次審査までは全員受験できることになった.また第5回からは前年度に3次審査で不合格になった場合は,翌年の受験に限り1〜2次審査は免除にすることに変更された.
指導検査士認定試験は今までに4回実施されたが,受験資格として経験年数が最低13年以上(消化器領域の超音波検査士を取得後2回以上更新後)が求められており,現状では受験者が少ないことが問題点としてあげられる.このため平成28年度からは受験希望者に対して受験対策の講習会を開催する予定であり,より多くの技師の受験を望む次第である.