Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 1 専門医,検査士制度とその教育をみなおす

(S184)

専門医,検査士制度の展望

Training and Education in Ultrasound Medicine

千田 彰一1, 2

Shoichi SENDA1, 2

1徳島文理大学副学長, 保健福祉学部, 2香川大学名誉教授

1Vice President, Tokushima Bunri Univesity, 2Professor Emeritus, Kagawa University

キーワード :

超音波専門医制度は,1990年に発足したが,当時種々の専門医が設立されていたころで,今日の主要なサブスペシャルティ専門医に先駆けて動き出した.超音波検査士制度は,それに先だって設計され,1986年から試験も実施されてきた歴史を有する.
検査士になるための受験資格は,当初看護師,准看護師,臨床検査技師(衛生検査技師)であったが,その後診療放射線技師が追加された.この変革時に厚労省との話し合いに応じた小職に担当官が言われたのは,超音波に関しては国家資格としての技師資格を創る予定はないので,今まで通り学会が所掌して進めていただきたい,ということであった.臨床検査技師が付加してとれる学会資格が幾つかあったが,当の技師さんたちから認知度が最も高かった細胞検査士に伍するような資格にしてほしいとの切望を受けた.臨床工学技士制度が誕生して,医療機器に関するメーカー側の情報提供・技術指導者に医療職者が適格であるとの認識が高まりだしたことで,超音波検査士の受験者は病医院の医療職者のみならず,医療機器メーカーに所属する技師さん方も相応の研修と試験合格が義務づけられるようになって,受験者は激増する様になり今日に至っている.検査士は,「医師の指示の下に」超音波検査を行える資格として,さらにいずれは広告標榜対象にもなり得る資格と考える.それだけに,現行の試験制度をより一層充実させねばならず,そのために研修プロセスの体系化が望まれるところである.
超音波専門医制度は検査士制度に遅れをとりはしたが,検査士制度の指導医体制や認定試験の方式などを参考にしつつ,1989年に専門医制度の骨格が固まり,そしてすべての規約や委員会組織まで一気呵成に制定した.この時の初代委員メンバーは,その後本会の理事長はじめ役員を歴任された.それまで統括していた教育委員会から独立して,それぞれの制度委員会が誕生し,現行本会の教育・研修体制が確立された.
現在,小職が専門医制度に関わるようになったのは,専門医制度委員会委員長を仰せつかり専門医認定制協議会などに出席して第3群(基本の1階,サブの2階のいずれでもない領域横断領域群)の一員として活動していたことによる.新たな専門医制度が発進しつつある今なお,超音波専門医は制度として未承認となっているが,厚労省の「広告が可能な医師の専門性に関する資格」には比較的早く2003年に承認を得ており,今後も発展するものと確信している.現在の日本専門医機構は,19基本領域と29サブスペシャルティ領域専門医を認定しており,2017年から研修プログラムによる専門医養成の新たな仕組みが開始される.これは,医師の専門性の質を高めようとするもので,その研修履歴を公に開示して受診時の情報に供して信頼を得ようとする.本来は学会まかせでなく専門医の質を管理する権限を有した公的機関であらねばならないが,必ずしも現機構はその地位を得るにはいたっていないのが実態であろう.小職が関わる専門医制度検討委員会が主となってサブ専門医の在り方を含めた専門医制度全体のグランドデザイン構築を検討する任を担っているが,各層の大凡の合意を得るまでにはまだ日時を要するかも知れない.超音波専門医に関わるそこでの課題は,学科目でない超音波医学でありながら独立性を有する領域であり,確固たる研修プログラムを構築・運用する研修の場を確保していると明示できるかである.学問的に発展し続けること,診断・治療手技として日々進歩し続けることなくしては,世から認知されることなどあろうはずもなく,日本超音波医学会がその役目を果たし続けることが最大の近道であると思う.