Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2016 - Vol.43

Vol.43 No.Supplement

特別プログラム 領域横断
シンポジウム 領域横断 1 専門医,検査士制度とその教育をみなおす

(S184)

超音波専門医制度の現状と問題点

System to Rear Fellow of the Japan Society of Ultrasonics in Medicine: Current Status and Issue

山本 一博

Kazuhiro YAMAMOTO

鳥取大学医学部病態情報内科

Division of Cardiovascular Medicine, Endocrinology and Metabolism, Faculty of Medicine, Tottori University

キーワード :

30年前は,循環器領域において心臓超音波検査を施行できることが,現在のカテーテルインターベンションができることと同じような「特技」と扱われていた.したがって心臓超音波検査を自ら施行できない循環器内科医が多く存在していた.今では,超音波装置も広く普及し,循環器のみならず各領域において超音波検査は必須の検査項目となっている.
このように超音波検査が医療現場において普及する過程の中で重要な役割を果たしたことのひとつが日本超音波医学会の専門医制度であると思われる.1991年に本制度が発足して専門医の育成・認定が行われ,これまでに2000名以上の超音波専門医が誕生し,指導医も1000名を超え,国内の全都道府県に必ず指導医がおり専門医研修施設が存在するという状況を実現している.このような専門医,指導医の普及は,我が国の超音波医学の診療,そして研究と教育においても発展に大きく寄与したと評価して間違いないと思われる.
しかしながら超音波専門医制度が広く認知されているかというと,必ずしもそうとは言えない.その主たる理由は超音波専門医という言葉からイメージされる医師像が広く伝わっていないことにあると思われる.超音波専門医の試験では消化器,循環器などの領域を選択して受験するが,試験の半分は全領域に共通する問題に充てられており,超音波専門医とは特定の領域に特化した検査のみが施行できる医師ではなく,超音波医学の全領域にわたって広く知識を有していることが基本にある.また超音波検査を実施できるということと,単にプローブをあてて画像を描出していることはイコールではない.得られた情報を正しく解釈して病態把握ができてこそ超音波検査を行ったと言えるのであるが,そのような超音波検査の奥行きがあまり理解されていないことも,超音波専門医に対する認識が浸透していない理由ではないかと思われる.
新専門医制度の中における超音波専門医の位置づけを確立するためには,超音波専門医像を広く認識していただくことが重要と思われる.