Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 健診
健診 

(S705)

腹部超音波検診マニュアルの導入と使用の経験

Examination Manual for Abdominal Ultrasound Screening:Our experience

齊藤 弥穂1, 上山 真一2, 瀬戸口 由紀2, 平井 都始子3

Miho SAITO1, Shinichi UEYAMA2, Yuki SETOGUCHI2, Toshiko HIRAI3

1新生会高の原中央病院人間ドックセンター放射線科, 2新生会高の原中央病院人間ドックセンター検査科, 3奈良県立医科大学中央内視鏡超音波部

1Ningen Dock Center, Department of Radiology, Takanohara Central Hospital, 2Ningen Dock Center, Department of Clinical Laboratory, Takanohara Central Hospital, 3Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
当施設では2012年4月から2014年3月まで『腹部超音波がん検診基準(日本消化器がん検診学会)』と『腹部超音波検査所見の判定および事後指導区分(日本人間ドック学会)』を組み合わせた判定を健診システム上で使用してきた.さらに2014年4月からは本学会を加えた3学会共通の『腹部超音波検診マニュアル』の導入に合わせシステムに追加の更新を行い,現在も運用を継続している.初期の導入において判定医,検査技師,事務,システムそれぞれの立場で必要であった準備事項や運用上の取り組み,またマニュアルの導入時の作業や問題点などについて検討した.
【現在のシステムの概要】
当施設の使用システムは株式会社SCC社製「健診ヘルパー」である.健診対象は人間ドック,協会けんぽ,事業所検診などを含み,業務は予約から統計まで全てシステムの管理下で行っている.各検査の所見は帳票記入とコード入力を主体として運用しており,所見の重み付けによる自動判定機能を持つ.超音波検査の結果記入帳票では所見選択からカテゴリーと判定区分の両者が選択できるようにした.今回の対象期間(2012.4月〜2014.12月)では,3170件の腹部超音波検査を実施した.
【システム構築に必要な事項】
判定医,検査技師,事務,システムはそれぞれ以下のような作業に取り組む必要があった.
初回導入では,判定医はカテゴリー判定の院内勉強会および結果入力帳票の作成を担当した.運用開始直後は結果帳票の記入内容と入力項目,自動判定結果を検証し動作確認を行った.
検査技師は全員が院内外のカテゴリー判定の勉強会を受講した.また実際の導入前に3か月の試行期間を設け,全ての超音波実施症例の結果をノートに表記し後日カテゴリー3以上のものは実際の画像と判定をもとに判定医と検討を行った.運用後も判定に迷う症例は随時検討し,結果のフィードバックも可能な限り行った.
事務は導入時に検査予約や当日運用が途切れることのないようにスケジュール調整し,結果報告書の表記確認と調整,運用後の統計の出力や動作確認などを担当した.
システムは判定医の作成した帳票の内容にカテゴリー判定と事後指導の自動判定の組み込みを行った.
マニュアルへの移行時には,判定医と検査技師は学会や研究会の講演などに積極的に参加して内容の理解を深めた.帳票はマニュアル内の表を中心に新旧項目の比較を行い改変した.
事務はスケジュール調整と結果出力の表記確認,導入後の判定の統計の実施とカルテ検索などを担当した.
システムは判定医と検査技師の作成した帳票の追加項目に新規のコードを設定し対応する自動判定を作成した.
運用開始の4か月時点で判定医と検査技師が全判定の確認を行い問題症例を抽出した.マニュアル移行で新たに設定された「描出不能:カテゴリー0」の取扱いの理解に技師間の個人差が生じたため,該当全件のカルテと保存画像を元に再評価を行う必要があった.
【まとめ】
健診業務では規模の大きな施設ほどそのデータは膨大となり,マニュアルの普及とデータの集積にはシステム整備が不可欠と考えられる.
判定医と検査技師はマニュアルの内容の理解と正確な判断のための努力が必須であり,事務・システム側には通常業務を行いながら更新に対応し,データの正確性を維持する作業が生じた.これらの個々の作業時間とコストの発生などが一般的にも障壁となりうる項目かと思われる.
しかし『腹部超音波健診マニュアル』の使用は他検診施設や精査機関との表記や判断の差を減少させ,超音波検査の精度向上と均質化に貢献するものであり,学会主導による超音波指導医・専門医の支援により広く周知させたいと考える.