Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 健診
健診 

(S704)

超音波を用いた内臓脂肪面積測定の検討

Study of visceral fat area estimation using ultrasound

藤原 洋子1, 射谷 和徳1, 三竹 毅1, 篠原 通浩2, 大木 洋美2, 中川 徹2, 小泉 憲裕3, 窪田 直人4, 佐久間 一郎5, 門脇 孝4

Yoko FUJIHARA1, Kazunori ITANI1, Tsuyoshi MITAKE1, Michihiro SHINOHARA2, Hiromi OOKI2, Toru NAKAGAWA2, Norihiro KOIZUMI3, Naoto KUBOTA4, Ichiro SAKUMA5, Takashi KADOWAKI4

1日立アロカメディカル株式会社第二メディカルシステム技術本部, 2株式会社日立製作所日立健康管理センタ, 3東京大学大学院工学研究科バイオエンジニアリング専攻システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点, 4東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科, 5東京大学大学院工学研究科バイオエンジニアリング専攻

1Medical Systems Engineering Division 2, Hitachi Aloka Medical, Ltd., 2Hitachi Health Care Center, Hitachi, Ltd., 3Translational Systems Biology and Medicine Initiative, Department of Bioengneering, School of Engineering, The University of Tokyo, 4Department of Diabetes and Metabolic Diseases, Graduate School of Medicine, Department of Clinical Nutrition Therapy, The University of Tokyo, 5Department of Bioengineering, School of Engineering,, The University of Tokyo

キーワード :

【背景】
内臓脂肪の蓄積と動脈硬化症や糖尿病,高血圧症などの生活習慣病との因果関係が,最近の分子生物学的研究から明らかになってきており,癌のリスクを高めるという報告もある.内臓脂肪は蓄積しやすいが,運動を行えばいち早く消費されることも知られている.内臓脂肪量を継続して簡便に計測し,蓄積を抑えることで,生活習慣病や癌のリスクを下げることが期待される.
【目的】
臍部断層像に存在する脂肪のCT値から内臓脂肪面積を算出するCT法が,内臓脂肪面積測定のゴールデンスタンダードである.CT撮像を行うことから,被爆を伴うため短期間に連続して測定ができないことや,コストがかかることが課題となっている.
また,体内に微量の電流を流すことで脂肪量を特定する電気インピーダンス法は専用装置で実用化されている.専用装置であるため追加のコストがかかることや,体表などの水分状態によって計測値にばらつきが生じることが課題となっている.
本研究の目的は,広く普及している超音波診断装置を用い内臓脂肪を簡便に精度よく計測が可能であるかを,CTデータを用いて検討することである.
【対象と方法】
2014年3月から2014年12月までに日立健康管理センタの健康診断で腹部CT法の内臓脂肪検診を受診された男性105名,女性各100名の計205名の腹部CT画像,健康診断で計測されるパラメータを用いた.
本研究は日立健康管理センタ,東京大学,株式会社日立製作所の倫理委員会の承認を得ている.
(1)CT法で測定された内臓脂肪面積値(以下CT内臓脂肪面積値)と相関が高い超音波計測値や外部測定機器(メジャーなど)で計測可能なパラメータの検討を行った.
(2)(1)の結果から選出されたパラメータを用い,推定内臓脂肪面積値を算出した.更に,CT内臓脂肪面積値を目的変数とし,推定内臓脂肪面積値と健康診断で得られた数値を説明変数として重回帰分析をおこない,それぞれの説明変数にかかる係数を算出し重回帰式を作成した.重回帰式より計算した内臓脂面積値(以下,US内臓脂肪面積)とCT内臓脂肪面積値との比較を行った.
【結果と考察】
(1)CT内臓脂肪面積値と臍部断層像の内臓部分に該当する面積値にR=0.91と高い相関が得られた.また,内臓部分の面積は腹部の面積と皮下脂肪面積の差分にR=0.91と高い相関が得られた.更に皮下脂肪面積と皮下脂肪厚にR=0.83と高い相関が得られた.
(2)(1)の結果から,超音波装置で計測可能な皮下脂肪厚,皮膚表面-腹部大動脈後壁間距離と健康診断で計測を行う腹囲を用いて推定内臓脂肪面積を算出した.推定内臓脂肪面積値はCT内臓脂肪面積値とR=0.86と高い相関が得られた.更に,重回帰式より算出したUS内臓脂肪面積とCT内臓脂肪面積の相関係数はR=0.90とより一層高い相関が得られた.
【結論】
健康診断のエコー検査で,皮膚表面-腹部大動脈後壁間距離と皮下脂肪厚を超音波で計測することにより,簡便に被爆無しで内臓脂肪面積の計測が出来る可能性の見通しを得た.
今後,超音波診断装置を用いて内臓脂肪面積を推定し,CT内臓脂肪面積との比較を行う.
【謝辞】
本研究は,東京大学の光石衛先生,湯橋一仁先生,月原弘之先生,王君臣先生,自治医科大学の浅野岳晴先生のご協力をいただき,文部科学省科学技術振興調整費「システム疾患生命科学による先端医療技術開発拠点(TSBMI)」による支援を受け行われた.