Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 頭頸部・胸部・眼科
頭頸部・胸部 

(S701)

胸郭内腫瘍に対する超音波ガイド下穿刺の正診率に影響を与えた因子に関する検討

Factors influencing on diagnoses by ultrasound-guided needle aspiration for intrathoracic tumor

岩神 直子1, 岩神 真一郎1, 関谷 充晃3, 藤井 充弘1, 石渡 俊次1, 原 宗央1, 檀原 高2, 高橋 和久3

Naoko IWAKAMI1, Naoko IWAKAMI1, Mitsuaki SEKIYA3, Mitsuhiro FUJII1, Toshiji ISHIWATA1, Munetika HARA1, Takashi DANBARA2, Kazuhisa TAKAHASHI3

1順天堂大学医学部付属静岡病院呼吸器内科, 2順天堂大学大学院総合診療科, 3順天堂大学大学院呼吸器内科

1Respiratory Medicine, Juntendo University Shizuoka Hospital, 2General Medicine, Juntendo University Hospital, 3Respiratory Medicine, Juntendo Uninersity Hospital

キーワード :

【背景】
超音波ガイド下腫瘍穿刺は,ベッドサイドでも安全に実施可能な検査で,その正診率も高いことが知られている.一方で,診断がつかない症例がある事も事実である.
【目的】
当院で実施した胸郭内腫瘍に対する超音波ガイド下穿刺の診断に影響を与えた因子を明らかにすることを目的とした.
【対象】
1999年1月から2014年11月まで期間で,当院で胸郭内腫瘍に対して超音波ガイド下穿刺を実施して診断のついたもの.また,超音波ガイド下穿刺で診断が得られなかったが,その後の手術や剖検などで確定診断が得られた症例計140例を対象とした.
【方法】
対象症例で超音波ガイド下穿刺による全体の正診率を求めた後,正診率に影響を及ぼすと考えられる,腫瘍径,組織型,腫瘍内での低吸収域の有無や空洞性病変の有無等の病巣部の性状を確認した.腫瘍径,組織分類は肺癌取扱い規約 改訂第7版のTMN分類,組織分類に従った.
【結果】
1999年から2014年まで超音波ガイド下腫瘍穿刺を行った症例は140例で,男性116例,女性24例であった.悪性腫瘍と診断された症例は115例であり,男性95人,女性20人であり,全体の正診率は82.1%であった.病理組織別の正診率は,腺癌50人(96.1%),腺癌のうち細気管支肺胞上皮癌0人(0%),扁平上皮癌26人(72.2%),小細胞癌16人(93.8%),腺扁平上皮癌4人(80%),大細胞癌4人(100%),鑑別不可能な非小細胞癌4人(80%),組織不明の肺癌2人(66.7%),多型癌や肉腫あるいは肉腫成分を含む癌1人(50%),中皮腫2人(66.7%),その他6人(66.7%)であった.大きさ別では7cmを超えるもの21人(77.8%),5cmを越え7cm以下19人(76%),3cmを越え5cm以下50人(90.1%),2cm超え3cm以下14人(87.5%),2cm以下4人(80%),診療録で腫瘍径を確認できないものは3人であった.病変の部位別では右上葉29人(82.9%),右下葉27人(75%),左上大区26人(96.3%),左舌区4人(100%),左下葉22人(81.5%),前縦隔3人(75%),胸壁4人(66.7%)であった.病巣部の性状に関する正診率に関して,空洞を有する病変では9人(81.8%),含気のある病変で3人(75%)腫瘍内部に低吸収域を有する病変では40人(85.1%)であった.また,肺炎様,浸潤炎を呈するものの正診率は0%であった.
【考察】
本研究では,呼吸器悪性腫瘍に対する超音波ガイド下穿刺の高い正診率が示された.一方で,診断が得られなかった症例に関しては,組織型では多形癌や肉腫あるいは肉腫成分を含む癌,扁平上皮癌で正診率が低下することが判明し,細気管支肺胞上皮癌では診断をつけることができなかった.大きさ別では5cmを超える大きな腫瘍で正診率が低下する傾向にあった.部位別では右下葉,前縦隔,胸壁の腫瘍で正診率が低下する傾向にあった.病巣部の性状として,腫瘍内部の低吸収域の存在や空洞の存在は正診率には影響を及ぼさなかったが,含気のある病変では正診率が下がり,肺炎様の陰影では診断をつけることができなかった.呼吸器悪性腫瘍に対する超音波ガイド下穿刺は有用性の高い検査ではあるが,悪性所見が得られなかった場合も細気管支肺胞上皮癌や多形癌などは除外してはならず,肺炎様の陰影を呈する場合は,他のアプローチを考慮すべきと考えられた.