Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 頭頸部・胸部・眼科
頭頸部・胸部 

(S701)

CT検査と口腔内超音波検査による口腔腫瘍の原発部位診断

Diagnostic accuracy of intraoral ultrasound for primary oral tumor in comparison with CT

志摩 朋香1, 西田 睦2, 3, 入澤 明子1, 鈴鹿 正顕1, 山野 茂1, 大森 桂一1, 箕輪 和行1

Tomoka SHIMA1, Mutsumi NISHIDA2, 3, Akiko IRISAWA1, Masaaki SUZUKA1, Shigeru YAMANO1, Keiichi OHMORI1, Kazuyuki MINOWA1

1北海道大学歯学部歯科放射線科, 2北海道大学病院超音波センター, 3同検査・輸血部

1Department of Oral Pathobiological Science, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University, 2Diagnostic Center for Sonography, 3Division of Laboratory and Transfusion Medicine, Hokkaido University Hospital

キーワード :

【目的】
口腔腫瘍の画像検査において口腔内超音波検査(US),CT検査は有効な画像診断法として施行され,原発腫瘍精査における有用性が報告されている.しかし,臨床ではCTによる原発腫瘍の評価が困難となることがしばしば経験される.今回,臨床における原発腫瘍の描出率について,CTとUSを対比検討した.
【対象・方法】
2013年9月〜2014年12月に北海道大学病院を受診した口腔腫瘍患者のうち,USおよびCTを施行した12例を対象とした.性別は男性4例,女性8例,原発部位は舌,歯肉,頬粘膜,口蓋で,病理組織診断は全て扁平上皮癌であった.US使用装置はPHILIPS社製HD11,PHILIPS社製iU22X MATRIX,GE社製LOGIQ E9小型リニアプローブ15-7L,L8-18iを使用した.CT使用装置はTOSHIBA社製Aquilion PRIMEで経静脈造影剤を使用した.US,CTにて存在診断,T因子診断,深達度診断を行った.T因子診断および深達度診断に関して病理像と対比検討した.統計学的検討はカッパー値(κ)による一致率にて行った.また,深達度診断ではUS,CTともに粘膜表面から最深部までを計測し,CTにおいては病理の割断面とほぼ一致する面にて計測した.
【結果】
腫瘍の存在診断可能症例数はUS(12例,100%),CT(7例,58%)であった.T分類の内訳はUS画像上のT分類ではT1(4例,33%),T2(6例,50%),T3(2例,17%),CT画像上のT分類ではT1(1例,8%),T2(5例,42%),T3(1例,8%)であった.病理組織診断はT1(3例,25%),T2(7例,58%),T3(2例,17%)であった.USと病理組織診断のκ値は0.86,CTと病理組織診断のκ値は0.53であり,USと病理組織診断の一致率の方が高かった.腫瘍の深達度診断可能であった部位は舌と頬粘膜の11例で,例数はUS(11例,100%),CT(5例,45%)であった.病理組織診断との深達度の誤差はUSでは平均1.0mm,CTでは平均1.9mmで,USの方がCTより病理像との誤差が小さかった.
【考察】
CTの存在診断困難例では口腔内補綴物による金属アーチファクトがみられた.CTにてT因子診断のκ値の低下は,腫瘍の一部のみの認識のため誤差が生じたことが原因と考えられた.口腔内に金属補綴物が多数存在する場合,正確な診断のためにはCT撮像前の金属除去が有効と思われるが,口腔機能の低下を招くため実際には行われていない.USは金属アーチファクトの影響がないため,CTで描出不可能であった原発部位に対し小型プローブを使用したUSを施行したことが描出率の向上に寄与したと考えられる.
深達度診断ではUSの方がCTよりも病理組織診断の深さと誤差が少なかったことから,腫瘍の正確な浸潤範囲の把握には可能な限り,小型プローブを使用したUSを施行することが必要と思われた.