Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 頭頸部・胸部・眼科
頭頸部・胸部 

(S699)

頭頸部領域の摘出検体を用いたshear wave速度に関与する病理組織像の解明

Correlation between the shear wave velocity and pathological structure for fresh specimen of head and neck region

福原 隆宏, 松田 枝里子, 堂西 亮平, 北野 博也

Takahiro FUKUHARA, Eriko MATUDA, Ryohei DONISHI, Hiroya KITANO

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
近年,shear waveの速度を測定することにより,組織の硬さを定量的に評価できることが期待されている.しかし一方で,生体内の剪断波の速度を決定するものは何であるのか明らかでない.この謎を解くため,本研究では生体内のアーチファクトを一旦除去し,模擬臓器中で摘出検体のshear waveの速度を測定して,測定値と病理組織像の比較をおこなった.
【方法】
2012年7月以降に手術を施行し,術後6時間以内に摘出標本を検査できた頭頸部腫瘍の患者を対象に研究を行った.摘出病理標本をゲルに埋没し,shear waveの速度を連続5回測定した.その後,超音波断層像と同一平面で標本を作成した.作成した標本の病理組織像を,shear wave速度に特に影響していると思われる細胞密度と線維化程度で評価した.細胞密度は低と高の2段階に,線維化は軽度,中程度,広範の3段階に,それぞれ分類した.病理像と超音波画像を比較し,各部位において得られた平均のshear wave速度を比較した.
【結果】
対象は86摘出検体であった.原発甲状腺乳頭癌は25例,濾胞癌2例,良性甲状腺腫10例,甲状腺癌の転移リンパ節は16例,正常甲状腺11例,慢性甲状腺炎3例,頭頸部扁平上皮癌リンパ節転移は13例,その他が6例であった.線維化の程度によって有意にShear wave速度は増加した.一方で細胞密度は線維化ほど影響しなかった.癌細胞や間質組織,脂肪織などが混在する部位,石灰化を伴う部位や壊死部位での剪断波は測定不能であった.
【考察】
声帯内の生理的な影響は,shear waveの測定に大きく影響していることが予測されている.このため呼吸を止めて測定するなど工夫を行うが,頭頸部領域では頸動脈の拍動の影響を除去することは非常に困難である.このため本研究では摘出検体を使用しshear wave速度を測定した.病理組織構造は様々であるが,横波であるshear waveの伝搬速度に影響すると思われる組織構造は,細胞密度,線維化が考えられている.本研究ではshear wave速度には線維化が大きく影響し,細胞密度の影響は少ないことが判明した.この結果はshear waveによる評価が進んでいる肝臓の結果と類似する結果であった.肝臓領域では実際の組織像と比較検討した報告は少なく,本研究はshear waveの組織伝達速度と組織像の関係を解明するのに決定的な結果を表していると思われた.
【結論】
頭頸部の摘出標本で測定したshear waveの速度は,病理組織像での細胞密度との相関は弱く,線維化を反映して速度が速くなった.