英文誌(2004-)
一般口演 運動器
運動器2
(S695)
関節リウマチ患者において,関節破壊を予測するには関節エコー所見が有用である
Ultrasonography is potent tool for the prediction of progressive joint destruction in the patients with rheumatoid arthritis
武田 節子1, 真本 建司2, 岡野 匡志2, 杉岡 優子3, 多田 昌弘2, 橋本 あゆみ1, 乾 健太郎2, 小池 達也4, 中村 寛亮2
Setsuko TAKEDA1, Kenji MAMOTO2, Masashi OKANO2, Yuuko SUGIOKA3, Masahiro TADA2, Ayumi HASHIMOTO1, Kentarou INUI2, Tatsuya KOIKE4, Hiroaki NAKAMURA2
1公立大学法人大阪市立大学医学部附属病院中央臨床検査部, 2公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学, 3公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性制御学, 4公立大学法人大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性制御学,白浜医療福祉財団骨リウマチ疾患探索研究所
1Central Clinical Laboratory, Osaka City Univercity Hospital, Osaka, Japan, 2Department of Orthopeadic Surgery, Osaka City Univercity Medical School, osaka, Japan, 3Center for Seline Degenerative Disorder, Osaka City Univercity Medical School, osaka, Japan, 4Search Insutitute for Bone Abd Arthritis Disease, Osaka City Univercity Medical School, osaka, Japan
キーワード :
【背景】
関節リウマチ(RA)において,関節破壊を予測するには正確な滑膜炎評価が必要である.代表的なRAの疾患活動性評価方法であるDisease activity score 28-CRP(DAS)は,触診による腫脹・圧痛関節数や一般VASなど主観的な要素が多く,滑膜炎を評価する上で,正確性に欠ける.一方,ここ数年注目されている関節エコー(US)は関節内を視覚化でき,real timeに正確な滑膜炎評価が可能である.今回,当院および関連施設において各生物学的製剤(Bio)の効果を比較したAirtight試験のデータを用いて,Bio導入後の関節破壊進行に関連する因子を検討した.
【対象と方法】
対象は,US評価が可能であったBio導入患者127名(アダリムマブ35,エタネルセプト20,インフリキシマブ10,ゴリムマブ7,アバタセプト38,トシリズマブ17名)で,Bio導入時から2ヶ月毎にDASを含めた臨床評価と,6ヶ月毎にUSによる26ヶ所の滑膜炎評価(両側1-5MCP関節,1IP関節,2-5PIP関節,手関節(橈側,中央,尺側)を全て背側から観察し,グレイスケール(GS),パワードプラ(PD)でgrade 0〜3の4段階で半定量的に評価を行った.また,関節破壊についてはBio導入時と導入後12ヶ月時点で,手足のレントゲンを用いてmodified total Sharp score(mTSS)を計測し,単変量解析と重回帰分析を用いてΔTSSに関連する因子を抽出した.
【結果】
Bio導入後12ヶ月まで観察できたのは全体で81名であった.導入時のDASは4.59で,2か月時点より有意に低下し,12ヶ月時点では3.09であった(P<0.05).US評価では,導入時のtotal GS score 22.8,PD score 14.5が6ヶ月で有意に低下し,12ヶ月時点ではGS score 12.3,PD score 6.6であった(P<0.05).12ヶ月の平均ΔTSSは2.25で,この関節破壊を示すΔTSSと単変量解析で正の相関を示したのは,Bio導入時のGS score(r=0.318),PD score(r=0.262),6ヵ月時点のPD score(r=0.308)であった(P<0.05).また,年齢,性別,罹病期間,前治療歴を補正した重回帰分析では,ΔTSSはBio導入時のGS score(β=0.342),PD score(β=0.275),6ヵ月時点のPD score(β=0.336)と正の相関を示した(P<0.05).一方,DASはΔTSSと単変量解析,重回帰分析ともに正の相関を示さなかった.
【考察】
Bioを導入されたRA患者において,Bio導入時より6ヶ月間のUSでのPDの残存が関節破壊と関係しており,DASとは関係していなかった.このことから,関節内を視覚化できるUSの方が,触診による関節評価などの主観的な要素が多いDASよりも正確に滑膜炎を評価できていると言える.よって,関節破壊を予測する上ではDASよりもUSが有用であり,RA治療では定期的にUS評価を行うことが重要である.