Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 運動器
運動器2 

(S695)

体表エコーにて病変を観察し得た転移性肋骨腫瘍の1例

A case of metastatic rib fracture assessed by ultrasonography

国井 綾1, 渡部 朋幸2, 小野寺 尚2, 渡辺 秀樹2

Ryo KUNII1, Tomoyuki WATANABE2, Takashi ONODERA2, Hideki WATANABE2

1医療生協わたり病院初期研修医, 2医療生協わたり病院内科

1Junior Resident, Health Co-op. Watari Hospital, 2Internal Medicine, Health Co-op. Watari Hospital

キーワード :

【症例】
82歳男性.5年前に胃癌にて内視鏡的粘膜切除,4年前に左腎細胞癌,1年前に早期横行結腸癌に対してそれぞれ手術を施行されていた.2014年11月,立ち上がろうとしたところ突然右背部痛を自覚したため当院を受診した.胸部X線にて右第6骨折を認め精査のため入院した.外傷機転のない肋骨骨折症例で,過去に癌の治療歴があるため,癌の再発転移による病的骨折が疑われた.
体表エコーでは痛みの部位に一致した肋骨の侵食像と腫瘤像を認め,折り返し周波数を低下させて記録したカラードプラ画像では腫瘤内の血流シグナルを認めなかった.通常の骨折に見られる骨折段差は見られなかった.骨折部位の血腫像も見られなかった.血流の乏しい腫瘤による肋骨浸潤と診断した.ガリウムシンチでは病変部位への核種の蓄積が見られず,造影CTでは血流に乏しい胸壁の腫瘤を認めた.福島医大病院放射線治療科にて転移性肋骨骨折の診断となり,胸部に30Gyの放射線照射を行い症状は改善した.
【考察】
鈍的外傷に伴う肋骨骨折の診断には体表エコーの方が単純X線よりも優れているとする報告が見られる[1,2].CTスキャンと体表エコーの肋骨骨折の診断能を比較した報告はないが,一般的には骨折を疑う場合,多列CTによる3D再構築像ではその優れた空間分解能により骨折の有無や肋骨の性状を容易に把握できることが多い.今回の症例は,体表エコーによるBモード画像により肋骨骨折を診断したのみでなく,カラードプラ情報により腫瘤内の血流情報をも合わせて表示することにより腫瘤内の性状を推定することができた.骨折の存在が明らかな場合でも腫瘤の性状や原発巣の推定に役立つ可能性があり,エコーを積極的に行う方が良いと考えられたため報告した.
 
1.Turk, F., A.B. Kurt, and S. Saglam, Evaluation by ultrasound of traumatic rib fractures missed by radiography. Emerg Radiol, 2010. 17(6):p. 473-7.
2.Griffith, J.F., et al., Sonography compared with radiography in revealing acute rib fracture. AJR Am J Roentgenol, 1999. 173(6):p. 1603-9.