Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 運動器
運動器1 

(S692)

上腕骨結節間溝内に発生した上腕二頭筋長頭腱石灰沈着性腱炎の1例

A case of calcific tendinitis of the long head of biceps brachii in the intertubercular groove

藤原 美子1, 加藤 由美1, 山本 周一1, 菊田 健太1, 仲川 喜之2

Yoshiko FUJIWARA1, Yumi KATO1, Syuuichi YAMAMOTO1, Kenta KIKUTA1, Yoshiyuki NAKAGAWA2

1宇陀市立病院臨床検査科, 2宇陀市立病院整形外科

1Department of Medical Technology, Uda Municipal Hospital, 2Department of Orthopaedics, Uda Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
肩石灰沈着性腱板炎は日常診療において比較的よく遭遇する疾患であるが,石灰沈着の多くは棘上筋・棘下筋に生じる.今回,上腕骨結節間溝内の上腕二頭筋腱に生じた石灰沈着性腱炎の1例を経験したので報告する.
【症例】
64歳,男性.誘引なく朝より左肩関節痛出現し夜に増強.2病日目に当院初診.初診時,左肩可動域は疼痛のため著明に制限され37.6℃の発熱を有し,検血ではCRP 1.4,WBC 7400であった.XP前後像にて上腕骨結節間溝付近の石灰沈着が疑われ,XP結節間溝撮影,CTにて同石灰沈着が明瞭に描出された.エコーでは同石灰は上腕骨結節間内の上腕二頭筋長頭腱表面に存在することが確認された.以上より,上腕骨結節間溝内の上腕二頭筋長頭腱に生じた石灰沈着性腱炎と診断し,エコーガイド下に穿刺吸引施行.石灰様白濁液を吸引し1%リドカイン+デカドロンを注入しシメチジン内服を追加した.第3病日より肩関節痛は軽快し,第10病日にはXP, CTにて石灰沈着は著明に縮小し肩関節痛も消失し肩関節可動域も正常に回復した.
【考察】
上腕骨結節間溝内に発生した比較的まれな上腕二頭筋長頭腱石灰沈着性腱炎の1例を経験した.上腕骨結節間溝部の石灰沈着はXP前後像では上腕骨頭と重なり石灰沈着の部位及び形態の正確な診断は困難であった.CTでは,結節間溝の石灰沈着は明瞭に描出されたが,結節間溝内か間溝外かの判別は不可能であった.超音波検査では,上腕骨結節間内の上腕二頭筋長頭腱表面に沈着した石灰を明瞭に描出できた.また,治療においてもエコーガイド下にて正確に石灰を穿刺吸引し薬物を注入することができ,速やかな除痛及び機能回復を得ることができた.以上,超音波検査は本症例の診断および治療に非常に有用であった.