Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
静脈2 

(S685)

超音波検査にて特徴的な画像を呈した脂肪塞栓症を疑う一例

A case of suspected the fat embolism that presented a characteristic image by ultrasonography

中村 克也1, 平賀 真雄1, 坂口 右己1, 佐々木 崇1, 塩屋 晋吾1, 林 尚美1, 大久保 友紀1, 川村 健人1, 重田 浩一朗2

Katsuya NAKAMURA1, Masao HIRAGA1, Yuuki SAKAGUCHI1, Takashi SASAKI1, Shingo SHIOYA1, Naomi HAYASHI1, Yuki OOKUBO1, Kento KAWAMURA1, Kouichirou SHIGETA2

1霧島市立医師会医療センター超音波検査室, 2霧島市立医師会医療センター消化器内科

1Department of Ultrasound, Kirishima Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Kirishima Medical Center

キーワード :

【はじめに】
脂肪塞栓症は,主に多発外傷・骨折後に発症し,深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症と並び重篤な合併症であるが,その頻度は1〜3%と少ない.
今回我々は,超音波検査にて特徴的な像を呈した脂肪塞栓症の一例を経験したので報告する.
【症例】
85歳女性,腰椎圧迫骨折にて他院入院中に転倒し大腿骨頸部骨折を受傷.受傷後24時間後から嘔吐頻脈等の症状出現,その後呼吸苦Spo2低下血圧低下等出現し,肺血栓塞栓症が疑われ当院へ紹介となった.
【入院時血液検査所見】
WBC 181×102/μℓ,Hb 10.6g/dl,PLT 11.2×104/μℓ,Dダイマ34μg/ml,ESR 27.8mm,CRP22.7,PCO2 18.7mmHg,PO2 86mmHg
【胸部レントゲン】
心拡大と肺野のびまん性浸潤陰影を認めた.
【CT】
心拡大ならびに心嚢液貯留を認めたが,肺血栓塞栓を疑う所見は指摘できなかった.また下肢静脈に血栓の存在を疑う所見も指摘できなかった.
【心エコー】
LVEF66%,PAP42mmHg,右心拡大,左室扁平化,下大静脈拡大を認めた.血栓は指摘できなかった.
【下肢静脈エコー】
骨折部位直近の大腿静脈内にgas像に類似し,沸いてくる様な線状の多数の高エコーを認め,それが中枢側へ流れる様子が観察された.大腿静脈内にgasの混入する原因がないため脂肪滴の可能性を考えた.末梢に明らかな深部静脈血栓は指摘できなかった.
【考察】
鶴田の診断基準のうち,呼吸器症状および胸部X線所見,低酸素血症,ヘモグロビン値低下,頻脈,発熱,血小板減少,赤沈亢進を満たしており脂肪塞栓症と診断された.
脂肪塞栓症は受傷後12〜24時間後に発熱や頻脈を初症状として発症し,その後呼吸器症状や中枢神経症状,皮膚点状出血を認め,脂肪塞栓症に特徴的とされている.
今回の症例は,中枢神経症状や点状出血は認められなかったものの,類似した経過を示していた.
下肢静脈エコーでは所見の見られた場所が,骨折部位の直近の静脈内だったこと,また静脈内にgasが混入するような原因がなかったことから,骨折部から静脈内に流出した脂肪滴を反映した像と考えた.
【まとめ】
文献を検索しえた限りではこのような報告はなく,特徴的な所見と考え報告する.