Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
静脈2 

(S684)

冠動脈バイパス術前における下腿大伏在静脈エコーの有用性について

Efficacy of Echography for Greater Saphenous Vein by Coronary Artery Bypass Graft

吉岡 和哉1, 橋口 遼1, 川村 純子1, 関家 季実子1, 上田 政一1, 正井 崇史2, 岩倉 克臣3

Kazuya YOSHIOKA1, Ryou HASHIGUTI1, Junko KAWAMURA1, Kimiko SEKIYA1, Masakazu UEDA1, Takafumi MASAI2, Katuomi IWAKURA3

1渡辺医学会桜橋渡辺病院臨床検査科, 2渡辺医学会桜橋渡辺病院心臓血管外科, 3渡辺医学会桜橋渡辺病院循環器内科

1Department, Laboratory Department, 2Department, Cardiovascular Surgery, 3Department, Cardiovascular Medicine

キーワード :

【目的】
冠動脈バイパス術においてグラフトとして内胸動脈,橈骨動脈や大伏在静脈(GSV)が採取されるが冠動脈多枝病変においては複数グラフトを使用する事が多い.当院では複数本のバイパスが必要とされる症例においては術前にGSVエコーを実施している.今回我々はエコー計測による血管径と術後グラフト造影の血管径から,下腿からのGSVエコー検査の有用性を検討することである.
【対象】
2012年1月から2014年10月までに施行した連続冠動脈バイパス術168例中56症例においてグラフトとしてGSVを使用した.グラフトはエコー計測から血管径が大きい下腿から採取し,大腿部採取3例を除く53例である(男性40例,女性13例).年齢は68±11(34-85)歳.1症例あたりバイパス3.64本に対してGSVを使用している.
【方法】
術前エコーとして下腿のGSV外径を臥位で計測した.血管径が描出できない,あるいは細い場合には下垂して検査し走行異常や血栓がないことを観察した.膝下部位及び末梢の2カ所の計測を行い,いずれも短軸にて(縦+横)/2とした.また術後カテーテル検査にてグラフト造影を施行し,大動脈吻合後と冠動脈吻合部前での2カ所の血管径を計測した.計測機器はGE:CA1000にて造影カテーテルサイズをキャリブレーションしてから造影されたグラフト血管径を2回平均して算出した.エコーによる血管径と術後造影グラフト径から比較し検討した.
【結果】
エコーにて56例,112肢中6肢が下腿グラフト使用困難であった.2肢は静脈瘤,4肢は細く不適合であった.A:膝下GSVエコー平均2.62(±0.48){最小1.80-最大4.05}mm,B:末梢GSVエコー平均2.95(±0.57){最小2.00-最大4.35}mm,C:術後CAG大動脈吻合後平均3.18(±0.53){最小2.26-最大4.25}mm,D:術後冠動脈吻合前3.57(±0.61){最小2.58-最大5.11}mm.拡張率D/Aは1.37であった(y=0.39x+1.23 p<0.001).拡張率C/Bは1.08であった(y=0.44x+1.54 p<0.002).いずれもエコーと比較し術後冠動脈グラフト径で有意であった.
【考察】
GSVエコー径と吻合部近くでの術後冠動脈グラフト径からは相関があり,造影によるグラフト径の拡張が大きいのはGSV採取後生食注入によって血管径を拡張させる事が考えられた.またD/Aの拡張率がC/Bの拡張率より高かったのは膝下のエコー描出がやや小さく計測される印象もありアプローチの影響も考えられる.しかしながら今回エコーによる血管径が最低でも2.1mmあればグラフト使用には可能と考えられた.今後術前GSVエコーで静脈瘤や走行だけでなく,血管径が保たれていたとしても壁肥厚や壁の輝度といった観察も重要と思われた.
【結論】
術前冠動脈バイパス術におけるGSVエコーは適切に評価することでグラフト採取に大きく影響するとともに,術後グラフト長期持続にも期待がありエコーは有用であった.