Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
頭部血管 

(S683)

喫煙は総頸動脈最大内中膜複合体厚の肥厚に最も影響する因子である

Smoking is the most important risk factor with regard to intima-media thickening of common carotid artery

豊田 茂1, 竹川 英宏2, 3, 岡部 龍太2, 4, 岡村 穏2, 岩崎 晶夫2, 西平 崇人2, 井上 晃男1, 高田 悦雄3

Shigeru TOYODA1, Hidehiro TAKEKAWA2, 3, Ryuta OKABE2, 4, Madoka OKAMURA2, Akio IWASAKI2, Takahito NISHIHIRA2, Teruo INOUE1, Etsuo TAKADA3

1獨協医科大学心臓・血管内科, 2獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 3獨協医科大学超音波センター, 4公立阿伎留医療センター内科

1Cardiovascular Medicine, Dokkyo Medical University, 2Stroke Division, Neurology, Dokkyo Medical University, 3Center of Medical Ultrasonics, Dokkyo Medical University, 4Internal Medicine, Akiru Municipal Medical Center

キーワード :

【目的】
本邦における頸動脈内中膜複合体厚の肥厚に最も影響する因子について明らかにする.
【対象と方法】
栃木県内の7市町村で開催された「健康まつり」で無料の頸動脈エコー検査を施行された784例のうち,検査前のアンケート調査に不備を認めた25例を除外した759例(62.8±11.7歳,男性221例)を対象とした.アンケートは年齢,性別,喫煙ならびに飲酒の有無,健康診断や病院で高血圧,脂質異常症,糖尿病の指摘をうけた有無,これらの疾患の薬物治療の有無ついて確認した.加えて,心臓病ないし不整脈および脳卒中の有無,抗血栓薬内服の有無についても調査した.頸動脈エコー検査は座位で左右の総頸動脈を確認し,最大内中膜複合体厚(IMT-Cmax)を測定した.IMT-Cmaxが1.0mmを超えるものを壁肥厚と定義し,肥厚群,非肥厚群に分類し解析した.統計はPearsonのカイ二乗検定,Mann-WhitneyのU検定およびロジスティック回帰分析を用いた.なお,頸動脈エコー検査前に全例アンケート調査ならびに得られたデータについて学会発表や論文作成の承諾を得た.
【結果】
肥厚群108例,非肥厚群651例であった.背景因子は年齢(中央値)71歳,64歳,男性45.4%,26.4%,喫煙14.8%,5.68%,高血圧63.0%,33.8%,降圧薬内服56.5%,27.5%,糖尿病21.3%,10.9%,糖尿病治療薬内服13.9%,6.76%,脳卒中既往10.2%,0.922%,抗血栓薬内服20.4%,8.60%と肥厚群で有意に高値であった(p<0.001).年齢,性別で補正した多変量解析では,壁肥厚に関する因子は,喫煙3.56倍,高血圧2.03倍,降圧薬服用2.02倍,脳卒中既往8.36倍と有意な要因であったが,糖尿病は有意でなかった(p=0.06).これらの因子を補正した結果では,喫煙(オッズ比3.77倍),脳卒中既往(オッズ比)8.36倍のみが有意となった.
【考察】
頸動脈の内中膜複合体厚の肥厚は心血管障害発症のリスクであることが知られている.一方,メタ解析では個々の変化を追跡したものではないものの,内中膜複合体厚の増加は心血管障害発症と相関しないことも報告されており1),初回の内中膜複合体厚が重要とされる.この肥厚は高血圧や脂質異常症,喫煙などの危険因子が知られているが,Berniら2)は単独の危険因子を有する例を対象に検討を行い,最も重要な因子は肥満であり,次いで高血圧,脂質異常症,喫煙であると報告している.われわれの検討では体重やbody mass indexの測定は行なっていないものの,肥厚に最も影響を及ぼす要因は,脳卒中の既往を除くと喫煙であった.本検討は「健康祭り」に来場した健康意識の高い集団であり,複数の危険因子を有する例も存在したため結果に違いが生じた可能性がある.しかし健康意識の高い集団において,より一層の禁煙啓発を行なうことが心血管障害発症の抑制につながることが予想される.
【結論】
喫煙は内中膜複合体厚の肥厚に最も関与する因子である.
【参考文献】
1)Costanzo P, Perrone-Filardi P, Vassallo E, et al. J Am Coll Cardiol 2010;56(24):2006-2020.
2)Berni A, Giuliani A, Tartaglia F, et al. Atherosclerosis 2011;216(1):109-114.