Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2015 - Vol.42

Vol.42 No.Supplement

一般口演 血管
頭部血管 

(S683)

頸動脈超音波検査と甲状腺疾患

The carotid artery ultrasonography and thyroid disease

安田 英明1, 奥村 恭己1, 寺田 和始2, 吉田 路加2, 井上 陽介2, 森田 康弘2, 上杉 道伯2, 坪井 英之2, 曽根 孝仁2

Hideaki YASUDA1, Yasuki OKUMURA1, Kazushi TERADA2, Ruka YOSHIDA2, Yosuke INOUE2, Yasuhiro MORITA2, Michitaka UESUGI2, Hideyuki TSUBOI2, Takahito SONE2

1大垣市民病院血管専門検査室, 2大垣市民病院循環器内科

1Vascular Laboratory, Ogaki Municipal Hospital, 2Cardiology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
頸動脈を超音波で観察する際に,解剖学的位置関係から甲状腺が同時に描出さる.その甲状腺に何らかの異常を伴うことが多いが,それらの病変に対し,十分な注意が払われていない可能性がある.一方では頸動脈超音波検査時に甲状腺も同時に観察することの有用性が報告されている.
【目的】
頸動脈超音波検査時に,どの程度甲状腺疾患に遭遇するか検証する.
【対象】
2014年1月から10月までに頸動脈超音波検査が行われた668例(男性:472例,女性:196例)を対象とした.年齢は27〜96歳(平均71.6歳)
【方法】
頸動脈病変は男性に多く,甲状腺病変は女性に多いので,男女別に以下の項目について調べた.
(1)主たる検査目的の頸動脈に20%以上の狭窄性病変がどの程度あるか調べた.
(2)どの程度甲状腺疾患に遭遇するか,びまん性,結節性,単純嚢胞,石灰化のみに分けその頻度を調べた.
(3)甲状腺疾患を認めた症例については,過去に甲状腺の検査を受けたことがあるかどうか調べた.
【使用装置】
東芝社製:Aplio 500 リニア型探触子
【結果】
(1)頸動脈病変は男性228例48%,女性60例31%に認めた.
(2)甲状腺疾患は男性138例29%,女性111例57%に認めた.疾患内訳は男性ではびまん性が25例(18%),結節性が48例(35%),単純嚢胞が61例(44%),石灰化のみが4例(3%)であった.女性ではびまん性が13例(12%),結節性が61例(55%),単純嚢胞が36例(32%),石灰化のみが1例(1%)であった.結節性病変の内男性3例,女性5例に穿刺吸引細胞診が行われた.その結果乳頭がんと確定診断されたものを男女1例ずつ認めた.また,乳頭がん疑いとされたものを女性に1例認めた.
(3)過去の甲状腺検査歴は男性で4例,女性で5例しかなかった.
【考察】
動脈硬化性疾患の増加に伴い,頸動脈超音波検査の需要は増加している.それに対し甲状腺の検査を受ける機会はあまり多くない.今回の対象例で甲状腺に異常を認めた249例(男性:138例,女性:111例)でも過去に甲状腺の検査を受けていたのは9例(3.6%)のみであった.頸動脈超音波検査時に甲状腺異常に遭遇する頻度は男性で3割程,女性では6割程であった.また女性においては,主たる検査目的の頸動脈よりも甲状腺異常の方が多く存在した.それらのほとんどが良性ではあるが,時には悪性腫瘍にも遭遇する.甲状腺悪性腫瘍の発見率は,超音波による検診で0.1〜1.5%とされている.今回頸動脈超音波検査を契機に発見された甲状腺乳頭がん,および乳頭がん疑いとされたものは全体の0.45%(男性:0.2%,女性:1.0%)で,甲状腺がん検診での悪性腫瘍発見率と同程度であった.このことより,頸動脈超音波検査時に甲状腺も同時に観察することは,甲状腺がんの早期発見につながり有意義であると思われた.
【結語】
頸動脈超音波検査時に甲状腺異常に遭遇する頻度は,男性で3割程,女性では6割程あり,甲状腺も意識して検査することの有用性が示唆された.